遠く離れて



君はとても辛い気持ちを抱えたまま

僕なんかには計り知れないくらい

君は大人だったんだね、無邪気な子供のように

あの日、君が涙で流しちまったものを僕は今でも引きずっている


君は幸せの尻尾をつかんだことがあるかい?

僕はとてもよく似たものを手に入れたような気がする

君はなにをなくしてどこまで探しにいったんだろうか?

僕はここでなくすよ、でここで見つけようと思っている


夜更けに踏み切りを渡る列車の窓を見送る時に

君のことを思い出す、少し寂しくなって

賄っていくことだけがきっと本当のところなんだと

君は知っていたよね、僕なんかよりもずっと


僕は思い続けるということについて考えている

あんなに近くにいたのに、という口惜しい気持ちは消えていかないよ

日々の中に埋もれていっても、それはいつもそこにあるんだ


僕は僕の道をいく、君は君の道をいく

たとえどんなに遠く離れても、あの時僕らが呑んだ酒は

今も血となって体中を流れている

いつか君がいった言葉が、今も僕の胸に刺さっているように

強く抱きしめて、ありったけの空しさと

君が捨てていった物語を、僕はひとつひとつ拾い集めるよ



本当にひどい話さ、また僕を裏切るつもりだね

始めからなにもなかったのかい? それも僕のせいなのかい?

明け方の4時をまわるころ、狼の時間はやってきて

僕は君が恐くなって、知らないふりをした


君のことを思い出し、君を懐かしむ時、そしてこの唄を唄う時にも

後ろめたい気持ちになる、これは距離の唄でしかないから

君のことを唄おうとすれば言葉は君を知らなさすぎる

僕は言葉のせいにして、君に近づかないでいる


横浜に来るたびにいつも、うろついてしまっていたよ

もう一度君に会えるかも知れないと思って、あの公園の辺りを

公園では男たちが暮らし、子供が遊んでいる

僕は耳を澄ましたんだ、君が聞いた音を聞こうとして


そして僕は、淀んだ水のように疲れ切っている

僕に残された昼は僕のための夜を言い含めようと躍起になる

ゆっくりと静かに溢れだすように、水かさはどんどん大きくなっていくんだ


僕は僕の道をいく、君は君の道をいく

たとえどんなに遠く離れても、あの時僕らが語った夢は

今も風となって僕の中に吹いている

いつか君がこぼした涙が、今も僕のここに溜まっているように

強く抱きしめて、ありったけの空しさと

君が捨てていったあの夜を、僕は唄うよ僕のために


僕は僕の道をいく、君は君の道をいく

たとえどんなに遠く離れても僕はいうよ、


なあ、また会おう





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