■ 2006/10/01 「困惑のスターホース」
■ 2006/     「今日はTGの話をしよう」


「今日はTGの話をしよう」



つくづく危険なもの物書きだよ。まったく。
高橋源一郎ことTG
TGすなわち高橋源一郎
私は彼が死ぬほど好きだ
天才だと思う。尊敬しています。本当に。
TG教に入信。

わたしのTG体験を語りましょう。
本を手に取り
ページをめくる。
黙って読む。
「う~ん」なるほど。
その時。
ん。「・・・・」
声にならない声が喉の奥のほうで
発生してくる。
顔は驚きと喜びでニヤけてくる。
全身の毛が逆立ち、寒気を感じる。
そして、いつの間にか
頬をつたうのは、汗か涙かそれとも精液か。


ここからは作品解説

『ジョンレノン対火星人』

私は知りません、見たことがありません。
こんな美しいタイトル。
にもかかわらず、涙なしには読めない傑作。


『さようなら、ギャングたち』

ポストモダン焼き(ソースたっぷり)
ぽわ~ん。うっとり。
ス・テ・キ。
愛してます。

『一億三千万人のための小説教室』

TGは先生でもあります。
日本に散らばる先生たちの中の、
僅か数パーセントが本当の先生です。
私はこれまで数人に出会いました。
出会ったことも忘れたかもしれないけど。

『優雅で感傷的な日本野球』

目に浮かぶ。
ピッチャーが投げてビューン。
バッターがバットを振って、ブゥン。
当たってカキィン。
セカンドがボールを追って、ザッザッザッ。
捕ってバッシッ。一塁へバッシッツ。
アウト。

『いざとなりゃ本くらい読むわよ』

TGはたくさん本を読んでおられます。
少し読みすぎだと思います。

『文学なんかこわくない』

TGはとってもキュート。
優しいし、いろんなこと教えてくれるし、
大好き。これからも一緒にいようね。

『日本文学盛衰史』

私はこの分厚い文庫本を、
鞄の中に入れていました。
鞄の中の水筒の口が半分開いていたようで、
『日本文学盛衰史』はぶよんぶよんに膨らんだのでした。
分厚い『日本文学盛衰史』は更に分厚く、
太くなり、
あーあ、本棚に入りません。

石川啄木はじめ明治の文豪が
電話を掛けてきて
「本にとって水は天敵」
とみんな口をそろえて言うのです。

『君が代は千代に八千代に』

今。お尻の筋肉がぴくぴくと
痙攣しました。
ドクンと筋肉が動いたようでしたが、
私は大便がお尻を這ったかと思いました。


「困惑のスターホース
-ディープインパクトが競馬に与える影響-


第一章 3月まではダイヤの原石

 2002年3月25日は何曜日だったか。憶えていない。
競馬界の至宝、ディープインパクトのお誕生日である。
おめでたい。
2004年12月19日、ディープインパクトがデビューした日。
さて何曜日?
2005年1月22日、デビュー2戦目若駒ステークスは何曜日?しつこい?

 2004年のダービーを勝ったキングカメハメハが秋に突然、
故障し、すぐに引退。年末にはゼンノロブロイとタップダンスシチーの引退も決まり、
皆が次のスターホースを待ち望んでいた。
コスモバルクがいるじゃないか。コスモバルクなぁ・・・。あれは・・・なぁ・・・。
そんななか2歳馬からダイヤの原石探しが始まる。
まず良血馬サムライハートが注目されるが冬に骨折、長期休養。
困った。困った。その時!
デビューしたのがディープインパクトでした。

と、ここまで馬の名前がたくさん出てきて、
「よくわかんない」という人のために
たとえ話を一つ。

昼ごはんを食べに喫茶店に行きました。
あーハンバーグ食べたいな。
「ハンバーグ定食一つ。」
「すいません、ハンバーグ定食は今日は終わりました。」
「えーないのー。じゃあ、カツ丼。」
「本日のカツ丼のカツはハムカツです。ご了承ください」
「もう!じゃこのスペシャルランチ!」
そのスペシャルランチはハンバーグとエビフライと
ディープインパクトがついていました。?ん?

どうでもいい話はこれくらいにして、
デビュー3戦目。
2005年の弥生賞。
もう競馬ファンのほとんどは知っていた。
新しいスターがいる。
私は阪神競馬場のターフヴィジョンでレースを見ました。
その日は日曜日でした。


第二章 人気沸騰

 弥生賞を勝ったことで、
デビュー3連勝となったディープインパクトは、
クラシック候補No.1の座を確実のものとした。
3冠馬になることを約束したかのようだった。
競馬を知ってる人も知らない人も
ディープインパクトが大好き。
ディープインパクトが勝つことを望んでいる。
( 負けて欲しい人だっている。馬券で高配当を狙う人は、
夜な夜な呪いをかけている。それが競馬)

みんなが大好き国民的ヒーロー。
古い歴史を持つ競馬雑誌「優駿」の表紙を飾ったのは、
4月号(2005年3月25日発売)が最初。
その後、6月、7月、10月、11月、12月、1月。
つまり、2005年一年間の「優駿」表紙の半分以上を占めたのである。

どうしてそんなに人気を集めたのか。
一言でいえば速くて強いからだが、
それだけでは説明がつかない。
私の考える人気の秘密は、
「クセのなさ」である。
1.名前
ディープインパクトという格好いい名前。
(私はこれが一番の要因だと思うんだけど)
また、サクラ○○とかメジロ○○のように
由緒正しい伝統を背負っていない。

2.血統
父サンデーサイレンス
母ウインドインハーヘア
両方とも日本の競走馬ではないので、
ありがちな「親の果たせなかった夢を」的なドラマがない。
ドラマになりそうな兄ブラックタイドの話は出てこない。
かわいそうなブラックタイド。

3.騎手
武豊である。

その他、調教師、馬主、生産牧場など、どれもこれも
クセのない、万人受けしやすい要素ばかり。
これだから競馬を知らない人でも応援しやすい。
手垢のついていない、きれいさっぱりのヒーロー。

好かれるのには理由がある。
それがわかってもどうにもならない。
世の中には、
自らの手ではどうすることもできないことが、
多すぎる。あまりにも多すぎる。
多くの人は、
指をくわえて見ることしかできないのだ。
ディープインパクトが走る姿を。


第三章 10月23日は記念日

何もかもが上手くいかない時、
これからもずっとこのままだと思ってしまう。
何もかもが上手くいきすぎると、
どこかに落とし穴があるのではないかと不安に思う。

菊花賞のその日。
ひょっとしたら落馬するんじゃなかろうか。
落馬して骨折して、
そのまま予後不良となるんじゃなかろうか。
アンチファンでもそれだけは誰も望んでいない。
勝っても負けてもいいから、
無事にゴールして欲しい。
レース中に白鳥になってもいいから、
怪我をせずにレースを終えて欲しい。
今まで繰り返されてきた
レース中の名馬の死は見たくない。
いくら悲壮感のないスターホースだからといって、
そんな悲しい結末はいらない。

願いどおり
無事にゴールした。

めでたし、めでたし。


第四章 泣く子も黙る切り札?

2005年12月25日有馬記念。
ディープインパクトはハーツクライの2着に終わった。
レース終了直後、
「取り返しのつかないことになってしまった」という雰囲気。
「もう一度やり直したい」って言ったってそれは当然無理、無理。

場内は騒然として、
泣いている観客もいたみたいだけど、
私は少しほっとした。
もしもディープインパクトが
引退までの全てのレースで圧勝、圧勝を
繰り返して、コースレコードをいくつも更新して
いろんな記録を塗り替えて、
一度も負けずに競争生活を終えたら、
過去の名馬が色褪せてしまわないだろうか。
何もかもを凌駕する「基準」になってしまうのは、
避けるべき事態。
問答無用の馬はつまらないのだ。

競馬ファンなら一頭ぐらい
My No.1ホースというのがいる。
「あの時のナリタブライアンは強かったなぁ」
「いやいや、メジロマックイーンのほうが・・・」
「なにを。マルゼンスキーが一番強いわい」
結局どの馬が本当に一番強いのかは分からない。
だからこそ、私の一番が一番なので。
楽しいわけなのであって。
「おじいちゃんたち何言ってんの?
ディープインパクト知らないの?」って若い子らに偉そうに言われたくないのじゃわい!
強い馬が一番じゃないのじゃ。
速いのが偉いんじゃないのじゃ。
浪漫とか夢とかいうと安っぽく聞こえるかも知れんがのー
他にいい言葉が見つからないんじゃ、
競馬はソレであって、アレなんじゃ。


結びとしての第五章 凱旋門

いくら人気を集めたからといって、
速く走れるようになるわけではない。
一番人気になったからといって
百メートル先からスタート切れるわけではない。

本日2006年10月01日。
時刻は午後12時20分。
今から約12時間後に
凱旋門賞の出走です。
ハリケーンランやシロッコやらと
一緒にディープインパクトが走ります。
日本中が応援するそうです。
日本を代表している馬です。
日本代表を応援しましょう。
朝のニュースでも
昼のニュースでも
夕方のニュースでも
凱旋門賞の話題が取り上げられています。
空前絶後の競馬ブーム。
ディープインパクトブーム。
JRAのコマーシャルに
一頭の馬の、しかも海外のレースを
取り上げるのは異例。

日本にいるファンは
凱旋門賞の馬券が買えません。
馬券を離れて一頭の馬を応援するのです。

新しい競馬ファンが、(今までの競馬ファンも含めて)
競馬をギャンブルじゃなくスポーツとして観ることになるのであれば
私は嬉しい気持ちです。

早ければ今年。
長くても来年か再来年までに
ディープインパクトは引退します。
残り少ない時間を楽しみましょう。
無事に勝って帰ってきてくださいね。

今日が良い記念日になりますように!

2006/10/01 (日)