| | <子どもを自立させるために>
ピッチの上では一人一人が自立して判断することを求められるスポーツ、それがサッカーです。
ピッチ上で、自分自身で考え、判断できる子どもを育てるためには、指導者と保護者の連携が
必要です。子どもが今まで以上に実力を発揮できるようになるために、自分自身の力で判断す
る力を子どもから引き出しましょう。
子どもを自立させるためには、言葉によるトレーニングが非常に効果的です。身体を使って行うス
ポーツであるサッカーと言葉は一見関係がなさそうです。しかし、刻一刻と変化する状況の中で
即座に的確な判断を下すことを要求されるサッカーでは、考えるための道具を身に備えているこ
とが非常に重要です。それが言葉です。日常の家庭生活の中で子どもに言葉を使って考える機
会を与えましょう。考える力は必ずサッカーに生かされるでしょう。
<察しの悪い振りをする>
子どもの考える力を伸ばすためには、保護者は「察しの悪い振り」をしましょう。
ただしそれは、子どもの考えを理解しないとか、子どもの気持ちを無視する、ということとは違います。
子どもが何を考えているのか、子どもが何を求めているのか十分に察知し、理解できるけれど、あ
えてわからない振りをして、子どもに自分の考えを言葉に出して表現させること、それが「察しの悪い
振り」をする目的です。
例 (子)「お母さん、すねあて・・・」⇒(親)「すねあてがどうしたの」⇒(子)「ないの」⇒(母)「すねあてな
いの?どうしてだろうね?」⇒(子)「忘れたの」⇒(親)「忘れてきたの?どこで?」⇒(子)「この前
練習にいったとき、グランドに忘れたみたい。」⇒(親)「それならコーチに聞いてみなさい。コーチ
が忘れ物として持っているかもしれないわ。」⇒(子)「うん、わかった!そうする!」
<「何となく」「ビミョー」を許さない>
子どもに何か質問すると、「何となく」「知らない」「わからない」「ビミョー」などと曖昧な返事が
返ってくることが多くなりました。こうした返答はコミュニケーションの放棄です。他人と深いコミュ
ニケーションを結べなくなるばかりでなく、物事を掘り下げて考える習慣を身につけなくなります。
子どもの曖昧な返事に対抗するには、それを決して許さないという毅然とした態度を親がとる
こと、そしてそうした返事のくり返しが自分にとって不利益だということを子どもに理解させること
です。
例 (親)「今日は練習楽しかった?」⇒(子)「ビミョー!」⇒(親)「あらそう。それってたいして楽しくな
かったって意味?」⇒(子)「あ、そういうわけじゃ…。」⇒(親)「楽しくないならわざわざ行く必要
ないわね。コーチに相談してみる?」⇒(子)「あの…、ビミョーに楽しかったってこと!練習も
うまくいったし!」⇒(親)「ビミョーってそういう意味なのね?」⇒(子)「うん。練習は楽しかった
よ。また行きたい!」
<具体的に考える機会を与える>
子どもの言葉は、印象を語っただけで終わってしまったり、感覚的な言葉だけで伝えようとした
り、オノマトペ(擬音語)だけですべてを語ろうとしたりすることが多いものです。大人が「そうかぁ、
おもしろいからサッカーが好きなのか」と納得してしまうと、子どもはそれ以上深く考えません。印
象の中身を掘り下げて考えたり、音で表現した中身を具体的な言葉で言い換えたりすることが
できるようになると、さまざまな場面で必要に応じて自分の感覚や印象を具体的な言葉で表現
する能力が身につくでしょう。
例 (子)「今日の試合でシュート決めたよ!」⇒(親)「おっ、それはすごい!どんなふうに決めたんだ
い?」⇒(子)「ズバッと決めた。それで勝ったんだよ!」⇒(親)「なるほど。ズバッとって、どんな風
にシュートを決めたの?」⇒(子)「ゴールのすみにすごいスピードでシュートが決まったんだ!」⇒
(父)「なるほど、そうか。シュートに勢いがあったのか。キーパーは反応したの?」⇒(子)「ボール
に勢いがあったから、キーパーは動けなかったんだ!」⇒(親)「フムフム。本当にズバッとシュー
トが決まったんだな。」
<論理的に考える機会を与える>
子どもに論理的に考える習慣を身につけさせましょう。子どもにとっての論理的とは、根拠に基づ
いて考えるということで、厳密な意味での論理ではありません。子どもが何か考えを述べたら、必
ず「どうして?」と理由を尋ねるようにしましょう。その環境に慣れてくると、子どもは問われなくても自
分から「理由は、なぜかというと、どうしてかというと」と根拠を述べるようになるでしょう。日常生活
の中で理由を問うのが難しければ、自分の考えを述べるゲームを子どもと一緒にやりましょう。それ
には「問答ゲーム」が有効です「問答ゲーム」のルールは簡単です。
1 結論を先に言うこと(「好き」あるいは「嫌い」と先に自分の結論を言います)
2 理由を述べること
3 大きな声でみんなに聞こえるように話すこと
…これだけです。
例 (親)「あずさはサッカーが好きですか?」⇒(子)「私はサッカーが好きです」⇒(親)「どうして?」
(子)「どうしてかというと、楽しいからです」⇒(親)「サッカーのどんなところが楽しいの?」⇒
(子)「足でボールをけるところが楽しいです。」⇒(親)「他にも理由があるかな?」⇒(子)「チーム
のみんなで戦うところが楽しいです。」⇒(子)「最初から続けて言ってごらん。」⇒(親)「私はサッ
カーが好きです。どうしてかというと、楽しいからです。楽しい理由は、足でボールをけるところと、
みんなで戦うところです。」
<5W1Hをフル活用>
子どもは自分の思いだけを最優先で伝えようとします。そのため、必要な情報が抜け落ちます。
こうした状況を放置すると、子どもは情報の抜けを意識して話せるようにはなりません。情報を検
討するためには、次のようなセンサーを自分自身の身につけることが大切です:
子どもの体内に5W1Hをセンサーとして設置するためには、親が子どもの言葉によく耳を傾け、
言葉の抜けを常に指摘するように心がけることです。つまり、5W1Hを手がかりに質問します。こう
した状況になじんでくると、こどもは自分から5W1Hを用いて話しをするようになります。
「いつ」「どこで」「だれが」「何が」「なぜ」「どんな」
例 (子)「お母さん、僕選ばれたんだよ!」⇒(親)「あら、良かったじゃない。何に選ばれたの?」⇒
(子)「今度の試合のレギュラーだよ!フォワードなんだ!」⇒(親)「まあ、それはすごい!ところ
で、今度の試合っていつあるの?」⇒(子)「11月21日、日曜日だよ。9時からだって。お弁当
作ってね。」⇒(親)「いいわよ。ところで、その試合はどこでやるの?」⇒(子)「世田谷総合公
園のグラウンドだって!送っていってくれる?」⇒(親)「世田谷総合公園ね。大丈夫よ。」⇒
(子)「この試合は大切なんだって。コーチが言ってた!」⇒(親)「なぜ大切なの?」⇒(子)「
なぜかというとね…。」
|