朝鮮時代最古の小説「금오신화(金鰲新話)を読む

이생규장전(李生窺牆傳)

   

「금오신화(金鰲新話)全5篇の第二話は、이생규장전(李生窺牆傳)という小説である。
개성(開城)に이생(李生)(イセン)という男が住んでいた。年は18才、才能きわめて豊かで、幼年より국학(国学)に通って勉学に励んでいた。通学の折も、道すがら、本を手放さないでいた。
通学路に최씨(崔氏)の邸宅があり、そこには、これまた、すぐれた才能をもつ16才の美しい娘が住んでいた。

ある日、이생(李生)は好奇心から、通学の折、최랑(崔娘)の家の塀の中に一遍の詩を詠んで投げ入れた。
すると、彼が帰るとき、塀の中から、一遍の返詩が、外の이생(李生)の元に投げられてきた。
それからというもの、二人は、최랑(崔娘)の家の裏山にある小さな楼閣で、密かに逢瀬を重ね、お互いの愛を一層深めていった。
だが、毎日、朝帰りする이생(李生)に対して、彼の父は激怒し、彼を、遠い田舎に送ってしまった。최랑(崔娘)は知る由もなかった。

최랑(崔娘)は、毎日、毎日、이생(李生)を待っていた。しかし、いくら待っても이생(李生)は現れず、しかも이생(李生)が遠い地に送られてしまったことを知り、とうとう、최랑(崔娘)は絶望のあまり病気になってしまう。
心配した최랑(崔娘)の両親は、理由を尋ねるが、최랑(崔娘)はただ黙っているのみであった。だが、あるとき、とうとう、真実を知ることになり、両親は、이생(李生)の家に使いを送り、二人を結婚させることを願った。
そして、めでたく二人は結婚して、夫婦になることができた。

이생(李生)は出世して、二人は幸せな生活をしていた。
しかし、その後、홍건적(紅巾賊)が개성(開城)を襲い、陥落させると、二人は、山の中に逃げていく。ところが、이생(李生)は無事に逃げることができたものの、최랑(崔娘)は、捕虜になって殺されてしまう。

乱が収まってから、이생(李生)は故郷に戻り、かって최랑(崔娘)と過ごした、あの小さな楼閣に上って涙した。
すると、そこに、愛する최랑(崔娘)が現れたのである。そして、彼女はすでにこの世にいない人であることを伝える。
彼女は、自分の遺骨が散らばっている場所を、이생(李生)に教え、その遺骨を集めて、風雨にさらされないにしてください、と頼んだ。
二人は涙を流して悲しんでいたが、최랑(崔娘)はすでにこの世のものではないため、いつまでも、この世にいると、あの世の違反になってしまうから、帰らなければならない、と言う。
こうして、別れのときが来ると、최랑(崔娘)は静かに姿を消してしまった。

이생(李生)は、妻の言葉通り、彼女の遺骨を集めて、両親の墓の傍に納めると、丁重に祀った。

この이생규장전(李生窺牆傳)も、真実の愛をもった男女が登場してくる。幾多の危機と、その解決とが繰り返され、いわば運命との葛藤が深刻に展開されていく。
そこには、深い愛と死を超えた、希望と愛がテーマとなっている小説と見ることができよう。
詩の才覚をもった二人のこととて、二人の間にとりかわされる漢詩にこめられた愛の気持ちは、特筆に値する。やはり、文学的に、すぐれた特徴的な伝奇小説の一編である。