朝鮮時代最古の小説「금오신화(金鰲新話)を読む

취유부벽정기(醉遊浮碧亭記)

   

「금오신화」(金鰲新話)全5編の第三話は、この「취유부벽정기」(醉遊浮碧亭記)という小説である。
この作品は、기자조선(箕子朝鮮)の首都、평양(平壌)を舞台にしたもので、富豪の息子、홍생(洪生)という男性と、기자(箕子)の娘で、死んで선녀(天女)になった女性との間の精神的な愛と、故国の興亡についての回顧の情とを色濃く描いた恋愛小説である。

개성(開城)に住む富豪の息子홍생(洪生)は、容姿がよい、気品があって、文才も豊かだった。
ある中秋の夜、友達と평양(平壌)に舟遊びをしていたが、酔うほどに、홍생(洪生)は、一人、小舟を漕ぎだしたところ、気づいたときには、부벽정(浮碧亭)の下まで来ていた。홍생(洪生)は、ここに小舟をとめて、梯子を上り、부벽정(浮碧亭)の上に上った。
手すりに寄りかかると、美しい名月の下、故国の廃頽の愁いを持って、6編の詩を作り、清らかな声で詠った。
すでに、午前0も過ぎ、帰ろうとすると、突然、足音が聞こえ、こちらにやってくる気配であった。

홍생(洪生)は、誰が来るのかと構えていると、それは意外にも麗しき女性であった。その女性の姿は美しく整っており、立派な貴族の娘のようであり、左右に侍女を従えていた。홍생(洪生)は生垣の間に身を避けていると、女性は美しい声で、楼上に上ってくるようにと声をかけ、挨拶をかわすことになる。
そして、홍생(洪生)の詩に、その女性も詩をもってこたえると、홍생(洪生)は無上の喜びを感じた。

その女性が語ってくれたところによると、彼女は、은왕(殷王)の末裔で、기자(箕子)の娘だという。しかし、父王は위만(衛満)によって王位を奪われて、とうとう朝鮮は、他人のものとなってしまう。彼女は、貞節を守って、ただ死を待つばかりであった。
するとそこに突然신인(神人)が現れた。
「私はこの国の始祖である。譲位してから仙人になって、もう数千年も生きている。お前も私について、天の궁궐(仙宮)に上り、そこで仙人になるのはどうだ?」と慰めてくれた。
彼女は、承諾すると、仙人の後について、궁궐(仙宮)に行き、そこで不死の薬を飲み、やがて、彼女も仙人になったものだと言う。

홍생(洪生)は、부벽정(浮碧亭)の楼上で、天女と一夜を過ごし、お互いに、詩をやりとりして、詠っては楽しんだ。
しかし、夜が明けると、天女は、突然吹き上がったつむじ風と共に再び天に昇って、やがて消え去ってしまった。

その後、홍생(洪生)は女を慕うあまり、病気になってしまった。
するとある日、夢の中に、美しい侍女が現れ、こう言った。
「ご主人様が、あなたのことを天帝に話されると、天帝は、あなたの才能を非常に惜しまれ、견우성(牽牛星)で종사관(従事官)とする命を下されました。」
홍생(洪生)は驚いて夢から醒めると、急いで沐浴し、服を着替え、香をたき、周りを掃除した。
そして、庭に敷物を敷いて横になると、しばし伏した後、急に死んでしまった。
何日かたっても、홍생(洪生)の顔色は変わらず、あたかも、生きているようであった。