朝鮮時代最古の小説「금오신화(金鰲新話)を読む

용궁부연록(龍宮赴宴錄)

   

「금오신화」(金鰲新話)の第五話は、「용궁부연록」(龍宮赴宴錄)である。
この小説は、第四話の「남염부주지」(南炎浮州志)と共に、몽유록(夢遊録)の構造をもち、後に、韓国において、몽유록(夢遊録)系小説の先駆的役割を果たしている点で、きわめて重要かつ特異である。
その上、この作品に登場する人物、地名、時代的背景などすべてが、朝鮮を中心とするものであることも、特徴である。更に、この作品には、女性が登場しない点も、特筆すべきであろう。

詩文に長じ文士として賞賛されている한생(韓生)のもとに、박연(朴淵)に住んでいる용왕(龍王)からの使者が訪れ、「神龍様の命によりあなたをお迎えにきました。」と伝える。
한생(韓生)は、断ることもできず、使者たちに従って、용궁(龍宮)に入る。
용궁(龍宮)に着くと、함인지문(含仁之问)をくぐり、やがて수정궁(水晶の宮)、백옥상(白玉牀)に案内された。
引き続いてすぐに3人の신왕(神王)が招待されて入ってきた。
全員が席につくと、용왕(龍王)は한생(韓生)に言った。
「私には娘が一人いて嫁ぐ年になりました。しかし、家には華燭の典をあげる建物もありません。そこで、別棟を一つ建てて、これに、”가회각”(佳會閣)と名付けたいと思います。
すでに準備はすべて整っていますが、ないのは、そのときに捧げる”상량문”(上棟文)だけです。
すぐれた、あなたの名声は三韓に響き渡り、その文才は及ぶものがいない、と存じています。それゆえ、遠路、こちらにお招きしたのです。どうか、私のために、”상량문”(上棟文)を作ってください。」

한생(韓生)は、しばし考えると、たちどころに、”상량문”(上棟文)を作り上げ、용왕(龍王)に渡した。
용왕(龍王)は、”상량문”(上棟文)の詩を読むと、大いに喜び、三人の신왕(神王)に、かわるがわる読ませた。
読み終わると、皆が、その詩を大いにほめたたえ、絶賛した。
そこで、용왕(龍王)は、”상량문”(上棟文)のお礼の宴をひらいた。
한생(韓生)は、용왕(龍王)に、3人の신왕(神王)の名前を尋ねた。
3人の신왕(神王)は、それぞれ、조강신(祖江神), 낙하신(洛河神), 벽란신(碧瀾神)と言う。
やがて宴の酒が進み音楽が響き、まず、10人ほどの美人たちが出て、벽담곡(碧潭曲)を歌い踊った。次いで、男性が10人ほど現れて、회풍곡(回風曲)を歌い踊った。
それが終わると、용왕(龍王)は、한생(韓生)に盃を差し出し、自ら수룡음(水龍吟)を歌って、喜びの気持ちを表した。
その後も、森の中の動物たちや、山の中の怪物たちが出てきて、次々と、歌、踊り、音楽を披露してくれた。
すべてが終わると、삼신(三神)たちが、それぞれ、詩を作り、また、한생(韓生)も、それに応えて詩を作った。

한생(韓生)は、용왕(龍王)に頼んで、용궁(龍宮)の中の宝物や楼閣を、あまねく見せてもらった。
한생(韓生)は、「そろそろ戻りたいと思います。」というと、용왕(龍王)に礼を述べ、挨拶をかわした。
帰り際に、용왕(龍王)は、はなむけの贈り物を用意してくれた。それは、「진주」(明珠)2粒と、「횐비단」(白い絹布)2 疋であった。
この贈り物は、終生、한생(韓生)の宝物として箱に入れて、誰にも見せず、大切にしまっておいた。
そして、戻ってからは、名刹を得ることもせず、山にこもって、その後のことは、誰にもわからない。