現在に伝わる儒教の精神・・
収穫を喜び祖先を敬い祀る
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韓国に儒教文化の灯を見ることができる最も顕著なものは、차례(茶礼)と제사(祭祀)であろう。
차례(茶礼)は、祖先と共に、収穫を祝う儀式であり、昔は、陰暦の1日や15日などに頻繁に行われていたようである。 しかし、最近は、四大名節(陰暦1月1日の正月、陰暦3月15日の寒食、陰暦5月5日の端午、陰暦8月15日の秋夕)と、陰暦1月15日の正月デボルムなど、限られた日に行う家庭が増えているようである。 一方、제사(祭祀)は故人の命日に行う祖先の供養の儀式である。日本の法事に相当する。 以前は、5代まえの先祖、7代前の先祖など、遠い先祖の供養も行われていたが、最近では、せいぜい2~3代前の先祖までの供養に限られているようである。 このように、차례(茶礼)と제사(祭祀)とは、目的とする性格に差異があるものの、儀式の内容や進行は、ほとんど同じである。 そして、儀式の最後には、家族全員で墓参りをして、行事が終了する。 実際には、地域ごとや、家庭ごとに伝統があって、同じ韓国の中でも、儀式のやり方はいろいろある、と言われている。 |
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祖先の霊を迎えて収穫を喜ぶ차례(チャレ:茶礼)
韓国の民族的な祭日の朝、祖先の霊を迎え入れ、共に収穫の喜びを分かち合う儀式が祭礼が차례(チャレ:茶礼)である。儒教の色彩が色濃い行事である。
昔は、毎月数回の頻度で行われていたようであるが、 最近は、차례(茶礼)を行うのは、四大名節(명절)と呼ばれる、설날(正月)(陰暦1月1日)、추석(秋夕)(陰暦8月15日)、한식(寒食)(陰暦3月15日)、단오(端午)(陰暦5月5日)が代表格で、この他に대보름(正月デボルム)(陰暦1月15日)に行われるなど、回数も減って、その内容・やり方も地域や家庭によって異なっている。 また、キリスト教徒の家などではまったく行わないのが普通である。 ![]() 伝統的に儒教色の強い行事であるので、昔は、男性のみで儀式が行われていたが、現在では、女性も含めて、家族・親族で行われることも多くなったと言われる。 儀式の最大のポイントは、차례상(茶礼床)の準備である。これは、主婦をはじめとする女性たちの仕事である。主婦にとっては、大変頭の痛い重労働である。 차례상(茶礼床)というのは、先祖に供える料理・祭需を並べたお膳のことであり、一定のルールに従って、準備されたものである。(写真 上左) ![]() 차례(茶礼)の儀式は、この차례상(茶礼床)を前に置いて、これもまた決まったルールに則ってお酒の入った盃を参列者たちに回して飲み、拝礼をするなど一連の式をこなしていく。(写真 右) 最後に祭主が杯のお酒を飲むと儀式は終了する、というのが一般的だそうである。 儀式が終わると、儀式に使った차례상(茶礼床)のお供え物を大きなお皿にもりつけ、それを食べながら、全員で食事をする。 そして、食事が終わると、最後にお墓参りをして、すべての차례(茶礼)の行事が終了する。 |
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故人を供養する제사(チェサ:祭祀)
現在、一般的に、제사(チェサ:祭祀)は、故人の命日に行われる기제사(忌祭祀)といわれる法事のことを言う。普通、当日の真夜中午前0時にはじめられる。
차례(茶礼)とは違って、故人の供養という意味合いが非常に強い儀式である。 大体、3代前までの先祖の命日に行われるので、一年間に数回の제사(チェサ:祭祀)をすることになる。 ![]() 儀式のやり方は、地域や家庭によってさまざまであるが、차례(茶礼)とほぼ同じ進行をするのが普通である。 祭主を務めるのは長男であり、当日は一族がみんな一堂に会して儀式に参列する。 以前は、男性しか参列しなかったが、現在では、女性も参列する家庭が増えてきているという。 しかし、祭主である長男の嫁を中心として女性たちにとっては、제사(チェサ:祭祀)は苦難の行事である。 それは、제사상(祭祀膳)に並ぶ料理、제수(チェス:祭羞)を用意しなければならないからである。(写真 右) 朝早くから、제사(チェサ:祭祀)が始まる夜更けまで、おどろくほどたくさんの料理を準備して並べなければならないからである。 제수(チェス:祭羞)の料理では、唐辛子やニンニクなど刺激の強い香辛料を使ってはならない。そして、塩と醤油だけで薄味に仕上げ、彩りも鮮やかなものは避けなければならない。 先祖の霊は、香辛料を嫌うからだそうどある。 ![]() 重要な제사(チェサ:祭祀)では、韓服を着ることもあるが、一般には黒系のスーツを着ることが多いようである。 参列者である子孫一族たちは、제사상(祭祀膳)に向って、2回ずつお辞儀をして、参拝する。 儀式が終わると、제사상(祭祀膳)の食べ物を下げて、参列者全員で食べるのが慣わしである。 夜が明けると、墓参に出かけ、墓の前で故人に参拝して、제사(チェサ:祭祀)の行事はすべて終わりとなる。 |
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성묘(墓参り)
![]() 儒教の影響が色濃い韓国では、昔から伝統的に土葬が主流であった。現在でも、土葬が主流であると言われているが、墓地にする国土面積の問題もあって、徐々に火葬も増えてきているそうである。 昔からの墓地は、土葬のこんもりとした小山がいくつかできている。 성묘(墓参)は、そのこんもりとした墓の前で行われる。 墓の前に、小さなテーブルを設置し、その上に祖先への供養の食事を用意し、家族たちは、そのお膳の前で頭を地面に付けるようにしてお参りする。(写真 右) 拝礼の仕方は、地方により、また家庭により、少しずつ違いがみられるようである。 以前は、男性のみで行われてきた성묘(墓参り)も、現在では、女性や子供も含めて家族全員が揃って出かけ、全員が拝礼するようになってきているそうである。 祖先への供養とはいえ、厳冬の성묘(墓参り)は、さぞかし辛かろうと考えるのは、下衆の勘繰り、だろうか・・・ 儒教精神は、すべてを乗り越えて、今なお、深く韓国人の心に根差しているのかも知れない。 |
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