決して忘れてはならない・・
今、根深く生きる陰暦の文化
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現在使われている暦は”陽暦”と呼ばれる”太陽”の運行に基く暦である。世界的に圧倒的に多数の国々で陽暦が使われている。
しかし、かつては、陰暦とよばれる”月”の運行に基く暦が使われていた国が多い。日本もそうであるし、韓国もそうである。 陽暦への転換により、陰暦の文化は、急速に衰えて行った。 日本では、既に、ほとんど、陰暦文化の痕跡がなくなっている。 しかし、韓国では、陰暦の伝統文化が生きている。韓国には現在11個の祝祭日が制定されているが、このうち、3個は陰暦で設定されている。 即ち、陰暦1月1日の설(正月)、陰暦4月8日の석가탄신일(釈迦誕生日)、陰暦8月15日の추석(秋夕)そして、祝祭日ではないが、陰暦1月15日の대보름(正月デボルム)の4つである。 実は、もう一つ忘れてはならない日がある。それは、誕生日である。 誕生日は陰暦で登録し陰暦で祝う家庭もあるし、陰暦と陽暦の両方で祝う人もいる。また陽暦で登録し陽暦で祝う家庭もある。さまざまである。 だから、韓国の人と知り合いになったら、その人が誕生日をどのように祝うか、よく聞いておかなければならない。 陽暦と陰暦とは、一例として、下記のサイトで変換することが可能である。 http://koyomi8.com/9reki/9rekicgi.htm 韓国の陰暦の祝祭日、誕生日などは、陽暦では、毎年変わるので、事前によく確認しておかなければならない。 ついうっかりすると、失礼なことになりかねない。 |
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설날(お正月)
韓国でも陽暦の1月1日は、양력설(新正)と呼ばれ、祝祭日であり休日である。しかし、それは単に1日だけのことであり、年が変わること以外に、特段の行事やイベントもない。
しかし、陰暦の1月1日は、설날(正月)と呼ばれ、名実共に1年の始まりを祝う祝祭日となっている。韓国では、秋の추석(秋夕)と並んで、二大名節である。 설날(正月)は、当日の前後あわせて3日間が祝日となっており、連休となる。 この日、家族・親族などの間では、세배(セベ:歳拝)と呼ばれる挨拶を交わし、子供たちには세뱃돈(セベットン:お年玉)を渡す習わしがある。 また、1日には、祖先のために供養物を用意して、차례(チャレ:茶礼)という行事を行い、祖先を祀る。その後、祖先のお墓に参拝するのが普通である。 また、설날(正月)には、たくさんの料理がテーブルに並ぶ。中でも、欠かすことができないのは、떡국(トックッ:お雑煮)である。 これらの準備のため、主婦をはじめ、女性たちは、数日前から、大変な家事労働が多く大変苦労する。 しかし、1年に一度、家族・親族が、祖先を祀り、お互いに祝う風習は、貴重なものの一つである。 |
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추석(秋夕)
설날(正月)と並んで、韓国の二大イベントが추석(秋夕)であり、陰暦の8月15日に行われる。
当日とその前後あわせて3日間が休日となる。 この日、皆が故郷に集まり、祖先の墓参りをし、秋の収穫に感謝をする古い伝統的慣わしである。 ちょうど、満月となる大きな月が明るく輝き、さまざまなイベントが行われてきた。 皆が一斉に故郷に帰るため、あらゆる交通機関は空前のラッシュに見舞われ、汽車・飛行機のチケットを取ることも困難だし、道路は車の渋滞で身動きがとれない状態となる。そのため、事前に十分な準備が必要だし、海外の旅行者はこの期間の韓国旅行を避けた方が賢明である。 一方、各家庭では、主婦が大奮闘して、ご馳走を用意する。家族・親戚が一堂に会するからである。 日本の年末風景を想像するとよい。商店も大変な賑わいであるし、主婦には大変な労働が待っている。 추석(秋夕)特有の食べ物として、송편(ソンピョン:松餅)を作る家庭も多い。韓国伝統の食べ物で、女性がこれをきれいに作ると結婚相手に恵まれるという言い伝えがある。 추석(秋夕)は、秋の収穫を感謝するという性格がある。そのため、当日の早朝に、この収穫した新米、果物、お酒などを先祖に備えて차례(茶礼)を行う。 차례(茶礼)を終えると、そろって墓参りに出かける。親戚一同が祖先の墓にお辞儀をして祀るのである。 この차례(茶礼)と墓参は、추석(秋夕)イベントのクライマックスである。 最近は、若者たちの間で、추석(秋夕)の大混雑の中を、わざわざ故郷に帰るのをとりやめる動きもあるようである。 将来、韓国の추석(秋夕)も、古き昔の伝統物語になってしまうかも知れないと思うと、ややさびしい気持ちがする |
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석가탄신일(釈迦誕生日)
韓国では仏教の釈迦誕生日とキリスト教のイエスキリスト生誕日は、それぞれ国の祝祭日に制定されており、休日である。
このうち、석가탄신일(釈迦誕生日)は、陰暦の4月8日にお祝いし、기독탄신일(聖誕節:イエスキリスト誕生日)は新暦でお祝いする。 ![]() 석가탄신일(釈迦誕生日)は、別名초파일(チョパイル:初八日)とも呼ばれる。旧暦8日という意味である。 韓国の全国の寺では記念のお祝いの行事が行われ、街中に연등(ちょうちん)が灯り、仏教徒たちで賑わう。 ソウルでは、연등축제(ちょうちん祭り)が催される。 ソウルの中心街、종로(鍾路)に位置する조계사(曹渓寺)は、韓国仏教界の最大宗派である曹渓宗の総本山として有名であるが、ここでは実に華やかで賑やかなお祝いの行事が行われる。 この日、조계사(曹渓寺)には、仏教徒のみならず大勢の市民たちが集まる。 右の写真は、석가탄신일(釈迦誕生日)の当日、たくさんの연등(ちょうちん)が飾り付けられた조계사(曹渓寺)대웅전(大雄殿)前である。 |
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대보름(正月デボルム)
韓国の祝祭日には含まれていないが、韓国人にとって、陰暦の大切なイベントの一つに、대보름(正月デボルム)がある。
陰暦1月15日の行事で、いうまでもなく、年が明けて最初の十五夜の日である。 一年の最初の十五夜の月を見ながら、その年の豊作と健康・幸せを願う韓国農耕社会時代の風習である。しかし、現在でもその風習は受け継がれており、全国あちこちで、お祝いのイベントが行われている。 ![]() 固い殻の中の実は栄養価が高く、冬の寒さに耐える体力をつけ、女性にとっては肌の美容にもよいとされている。(写真左) 元来が、農村から生まれた風習であるから、農業に関するさまざまな行事や遊び、あるいは食べ物が用意され、正月の名残を楽しむ風景が見られる。 そして今尚、대보름(正月デボルム)が終わると、ようやく正月が終わる、という感覚をもっているようである。 |
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誕生日
韓国人の誕生日はややこしい。陽暦でお祝いする人もいるし、陰暦でお祝いする人もいるし、その両方でお祝いする人もいる。
そもそも韓国では、出生届における出生日を、陽暦でするのか、陰暦でするのか、自由であるらしいので、戸籍上の生年月日は、陽暦の人もいれば、陰暦の人もいる。 韓国の人に誕生日を訊ねて、答えが返ってきたとき、それは、陽暦なのか、陰暦なのか、必ず確認する必要がある。 そうでないと、たとえば、陰暦の4月5日が誕生日の人に対して、陽暦の4月5日に、「誕生日おめでとう」というと、「えっ? 違います」と言われてしまう。 したがって、誕生日が陰暦の人は、陽暦では、毎年誕生日が変わってしまうので、毎年、変換して間違いのないように注意することが大切である。 韓国の人にとっては、あまり抵抗がないようだが、日本人には陰暦への馴染みが薄いので、ややこしく感じられる。 韓国の人は、身分証明書として満17歳以上の全員が、[주민등록증](住民登録証)を持っている。ここには、13桁の数字からなる住民登録番号が刻まれている。 この番号が個人認証の固有番号で、このうち最初の6桁が生年月日を表している。 番号は、出生届を提出したとき、全員に機械的に付与される。そして、一生、変わることはない。 満17才になると、申請して、[주민등록증](住民登録証)の発給を受けられる。 韓国での生活のあらゆる場面で、この番号は、個人を識別する重要な役割をはたしている。 したがって、出生に際して、生年月日を陰暦で届けるか、陽暦で届けるかによって、一生、その日が公式の誕生日としてついてまわるものである。 本人の意志が入り込む余地のないことは当然である。両親の考えで決まってしまう。 最近は、陽暦で届ける人が多い、と聞くが、実態は不明である。 |
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