2日目

 

千葉戦、都立戦があり、残留するにはこの2校には勝たなくてはならない。

初日に明治(明治は初戦で一橋に負け)に負けてしまったこともあり、正念場である。

 

3戦目 対千葉大学

 

残留争いのライバル校である。昨季負けてしまった相手だが、勝たなくては残留が厳しくなる。

敵の主力である寺田氏は2〜4将、永井氏は6、7将で出ていた。

 

5、6将で出ていた西村氏に昨季、高橋がやられている。その上、敵のオーダーは14番目が空欄で、

昨季、奈良が負けた福田氏や、山田が負けた尾澤氏などが7将として出てくる可能性が十分あった。

 

大将には積田氏で来るだろうと予想し、ここに川島を配置。

7将で福田氏か尾澤氏を出せば、岡の相手となるが、両氏は個人戦に出ていなかったため岡で五分、

西村氏か永井氏が奈良と当たるため、そこも五分。

 

7将がそのままなら、寺田氏、永井氏、西村氏と3つ負けても、43と読んでレギュラーをそのまま出すことにした。

 

当たりは川島―積田、渡辺―青木、山田―寺田、中島―菅原、奈良―西村、菊池―永井、岡―福田となった。

 

川島、渡辺、中島は有利。山田、奈良、岡は五分。渡辺が予想を覆し敗れてしまったものの、

川島が序盤作戦負けから中盤でひっくり返して大きな1勝を上げた。まずはその将棋を見ていただく。

 

下図では川島不利。

 

 

△3六飛、▲1五飛、△4八と、▲同金、△3九飛成

 

と進んで下図となり指しやすくなった。

 

▲1五飛では▲3七桂、△同角成、▲同 銀、

△同飛成、▲4五飛、△5二金寄、▲4一飛成で、

5五角から▲7四桂を見せられていたら苦しかった。

 

この一戦がチームの勝敗に関わることになった。

 

チームは、中島が勝ち、菊池が負け、山田は必勝形であったが逆転された。

五分の奈良と岡とが両方勝ったので4−3となった。

 

ここでチームの殊勲の星をあげた岡の将棋を見ていただく。

 

上図の最終手は狙いの角打ちだが、岡はこれを上回る好手を放つ。

 

 

△8六と、▲6一龍、△8五と、▲7一龍   

△7六と、▲6三桂、△6七と、▲同玉 

△6六飛、と進んで下図。

 

 

△8六と〜△6七と の、と金の活用がうまい。

▲7一龍の後の有効な手は5一の金に絡むくらいだが、本譜のように進め、絡んだ駒が抜ける。

岡はその勝負強さで、相手の主力を倒し、チームの危機を救った。

 

4戦目 対慶應義塾大学

 

超大型新人、春季個人戦優勝者の森本氏を加え、東大と肩を並べる超強豪校となった慶應。

ここまでは、オーダーを変えていなかった。B級からの昇級校である東工大に対して変えてくるとも思えず、

個人戦優勝経験者の小関氏、春季個人戦ベスト8の神谷氏、森本氏をかわして残りの4つをねらうことにした。

 

神谷氏の相手は、古豪新鋭戦の出場権利を考え、川島でなく阿部を。

森本氏には菊池に負け癖がつくのを考慮して友安を当てた。

 

当たりは阿部―神谷、渡辺―小林、籾山―小関、山田―井元、奈良―斉藤、森本―友安、岡―古賀となった。

 

次の早稲田戦に備えてか、慶應はレギュラーの小川氏ではなく古賀氏を出してきた。

渡辺、山田、奈良、岡が勝てば勝利である。

 

岡、奈良、渡辺が勝利を収め、籾山、友安が負け。阿部もいったん優勢になったが、緩手を放って負け。

大観衆の中残った、山田―井元戦が山田の勝ちとなって激戦に終止符。

チームが歴史に残る勝利をあげた瞬間だった。

 

ここでは勝った4人の将棋を見ていただく。

 

まずは岡の将棋。横歩取り8五飛から下図へと進む。

 

 

△2九飛、▲7三飛成、△8八角成、▲同銀、△9五角

と進んで下図となり岡勝勢。

 

 

▲7三飛成が一手ばったりの大悪手。

最終手で詰めろ龍取りがかかって将棋が終わった。以下は粘る相手を振り切って岡が勝利を収めた。

 

次に奈良の将棋である。奈良は今期部長を務めている。

主将を籾山にして負担を減らし、選手としても活躍する予定だったが、ここまで1勝2敗と不本意な成績である。

千葉大戦では西村氏を倒してチームに貢献したが、彼の本来の実力からすると物足りない。

ここは是非とも、勝ちたいところである。

 

 

 

 

▲3三歩成、△同角、▲7二桂成、△同銀

▲6二歩、△6六角、▲6一歩成、△5九銀

▲6七金、△5七金、▲6六金

 

と進んで下図へ。

 

 

難しい攻防が続いたが、△5九銀が悪手。ここで、△5七金として、ななめ駒を渡さなければ難しかった。

本譜は角が入って詰めろが続く形になり、勝ち筋に入った。

 

次に渡辺の将棋である。

渡辺は部内リーグで全勝優勝する(因みに、団体戦終了後に全勝で連覇を達成した)など、部内屈指の実力者である。

しかし、ここまで団体戦3連敗と調子が上がっいない。

この状態で、慶應の4番手である小林氏に勝てるのかが心配されていた。

 

将棋は横歩取り8五飛になり、下図を迎える。

ここでは劣勢である。

 

 

 

 

▲4六金、△5四飛、▲3六金、△8九飛

▲7九金、△9九飛成、▲2五金、△同銀

▲同桂、△4二玉、▲3四銀

 

 

 

上図と進んで逆転した。▲4六金が相手にもたれた指し方で参考になる。

ここでは、△3七歩成の攻め合いか、本譜の▲3六金に、△3四歩としていれば後手が良かった。

本譜は角が働いてきた。以下は角で後手玉をにらみ、飛車を素抜いて勝利した。

 

最後に山田の将棋である。千葉大戦での負け方が後を引きずっていないかが心配されていた。

3−3でこの将棋が残ったので、山田は見守る東工大生全員を色々な意味で心配させた。

 

相手の玉頭位取り作戦に対し、山田が無理気味に反発したが、相手も対応を誤った。

しかし、山田も寄せ間違え、泥仕合となったが、進んだ下図では勝勢である。

 

 

 

 

▲1四歩、△同香、▲3四金、△同銀

▲1五銀打、△2三玉、▲1四銀、△1二玉

▲1三銀成、△同玉、▲2五銀

 

 

上図となって山田が勝ち、チームとしては慶應から歴史的な一勝をあげた。

 

▲1四歩を指したところで山田は両手押し(指した手と逆の手で対局時計を押すこと。反則である。)

をしていたのだが、慶應の人達は気づいていながら、見逃してくれたのだ・・・・・

この一勝が大きくチームは勝った。

 

5戦目 対東京都立大学

 

慶應戦に勝ち、波に乗った東工大だが、ここで思い出すのは、去年の春2日目の第一戦である。

一昨年優勝校の明治に勝って気が緩み、日大、中央の降級候補2校に連敗して降級したこと・・・・

 

今回はそんなことがないように部員をしっかりと引き締めた。

都立は人数不足なのかオーダー表に7人しか名前が書かれていなかった。

降級候補の千葉大戦も名前が増えていなかったため、その7人しか出てこないことが分かった。

注意すべきは、3将のエース平田氏と慶應戦で勝っていた5、7将の1年小林氏と田口氏である。

 

平田氏を栗本でかわし、あとはレギュラーを出せば6−1で勝てる計算とふんだ。

 

当たりは予定通り、渡辺―長谷川、山田―木村、栗本―平田、中島―鈴木、奈良―小林、菊池―山崎、岡―田口となった。

 

残念なことに栗本は負けてしまったが、他6人が次々と勝利を収め、チームは6−1勝ちとなった。

 

ここでは期待の両新人菊池と栗本の将棋を見ていただく。

 

まずは栗本の将棋である。

 

相矢倉から下図になり、

 

 

▲6五歩、△5六歩、▲同金、△5三銀

▲6六角、△2五銀、▲同歩、△5四桂

▲5五角、△4六桂、▲同金、△5五角

▲同 金、△2七角、▲5四歩、△同銀

▲2八飛、△3六角成、▲4四金

 

と進んで下図。

 

 

▲4四金は勝負手。単に同金で分かり易かったが、相手も△8六歩〜△8五歩と暴れてきた。

しかし、応対を間違えて負けになってしまった。

まだ1年生なので、この経験を活かし来期には、もっと強くなって活躍してもらいたい。

 

次は菊池の将棋である。

 

ここまで3連敗と元気がない。元高校生千葉県代表としては勝って欲しいところである。

下図では相手に隙が生じている。

 

 

 

 

△5四歩、▲同歩、△同飛、▲5五歩、△2四飛

と進んで下図となった。

 

 

▲同歩では▲6六銀でまだ難しかった。本譜では狙い通り2筋へ飛車を展開して以下制勝。

菊池が強さを見せた瞬間だった。菊池は今年一番強い1年生だが、これからは1年生だけでなく、

チームを引っ張っていけるように頑張って欲しい。