3日目
この時点で降級争いは明治(勝点2勝数12)、日大(勝点1勝数12)、
東工(勝点1勝数11)、東洋(勝点0勝数10)に絞られていた。
明治の残りの相手が一橋、慶應なので3日目で東工が1勝できれば
残留の可能性は十分あると思っていた。
6回戦 日本大学
日大は準レギュラーが手厚く、オーダーが読みにくい。
主力は小川氏、田中氏、寺嶋氏。栗本を、副将でよく出ている生野氏を避け、
夏に一度勝ったことのある寺嶋氏にぶつけるため、山元を使った。
菊池―小川も避けたかったのだが、市村が遅刻したため、それは実現できなかった。
当たりは中島―片山、山元―寺嶋、栗本―原田、鎌田―田中、菊池―小川、
川島―大槻、奈良―井上。生野氏は出場してこなかった。二、四、五は苦しいが、
大、三、六、七が有利と思っていたのでまずまずのあたりだと思った。
しかし、予想に反し、中島、川島が敗れてしまい、2−5負けとなってしまった。 ここでは栗本、鎌田の将棋を見ていただこう。 まず、栗本の将棋から。

図は後手が△4五歩と見慣れない捌きをしてきたところ。栗本はこれを咎めに行く。以下
▲3三角成 △同 飛 ▲4五銀 △3五歩 ▲8八角 △6四角 ▲5五歩 △4四歩▲5六銀 △5四歩 ▲2四歩 △3二銀 ▲2三歩成となり、次図。単に角交換して居飛車が優勢なようだ。途中の▲5五歩で後手の角が窮屈になってしまった。 さらに図以下△同 飛 ▲同飛成 △同 銀
とすすんだがそこで▲2八飛と打ったのが好手で後手が手詰まりに
なってしまった。この後は、相手の苦し紛れの捌きを封じて優勢を拡大し、
先手が完勝した。
次に鎌田の将棋。 図は中盤戦。お互い手詰まりの状況に見えるが…。以下△9六歩 ▲同 歩 △9七歩 ▲8七角 △7三桂 ▲9七香 △8五歩 ▲同 歩 △同 桂 ▲同 桂 △同 飛△9六歩〜△9七歩がうまい手作り。▲同 香なら△9八角だ。先手は角を打って頑張ってきたが、今度はその角頭をねらって攻め、下図では優勢である。 進んで下図。 ここで鎌田は△6九飛と打ったが、これは悪手。以下▲5七銀 △2四角 ▲6八金 △7九飛成 ▲7八金 △6九竜 ▲6八金 △7九竜…と千日手に持ち込まれてしまった。後手は飛車が渡せない。図では△4一香とでも一度受けておくほうがよかった。
この後の指しなおし局では負けてしまい、千日手が悔やまれる。
鎌田は次代のエース候補なのでこの敗戦は良い経験となっただろう。
この日大戦の敗戦で残留は非常に厳しい状況になってしまった。
7回戦 一橋大学
6回戦で明治が一橋に勝って勝点を3にのばしたため、この時点で東工と
東洋の降級がほぼ決まっていた。残念だがひとまず、勝利するために
オーダーを考えた。一橋は強敵である。主力は菊田氏、高野氏、濱野氏、
古賀氏。古賀氏には奈良をぶつけ、菊田氏、高野氏、濱野氏は避け、
残りを勝ちに行くオーダーを作った。
当たりは友安―高野、中島―小板橋、栗本―菊田、鎌田―濱野、菊池―井口、
川島―木内、奈良―古賀。二、五、六が有利で七が五分。
結果は、戦前の想定通りに4−3勝ちとなった。
ここでは川島、菊池の将棋を紹介しよう。 まず、川島の将棋から。

図は四間飛車対棒銀からの進展である。
ここから
▲6六角 △3三桂 ▲1五歩 △7四銀 ▲1四歩 △7五銀
▲7三歩 △6六銀 ▲7二歩成 △1八歩 ▲同 香 △1七歩
▲同 香 △7七飛成 ▲1三歩成(下図)
となり優勢に。飛車角交換でも薄い端を突いた攻めがうまい。

図以下は完勝。川島にとっては最後の公式戦を優秀の美で飾った。
次に菊池の将棋。図は角換わりの終盤戦。 以下
△2五歩 ▲4一銀成 △同 玉 ▲4四桂 △6七銀 ▲2一飛
△3一桂 ▲5九角 △7八銀成 ▲同 玉 △6七金 ▲8八玉
△5九馬 ▲5二銀
と進んで下図。

ここから相手の攻めを切らせば菊池の勝ちだが…。
△4二玉 ▲3二桂成 △5二玉 ▲4二成桂 △6二玉 ▲7一銀△同 玉 ▲3一飛成 △6一銀 と進み、菊池の勝勢に。「玉の早逃げ8手の得」で相手の攻めを上手くいなした。
先手の玉には詰めろがかかっているので▲3二桂成で▲6三銀成と寄せに行くことができない。
この後は順当に寄せきり、菊池が勝利を手にした。

この対戦と同時に行われていた日大−東洋戦で東洋が勝ち、勝ち点で日大には並んだが、勝ち数が4つ足りず残念ながら降級が決まってしまった。しかし、最後まであきらめずに戦ったことは評価できる。この勝利を来期につなげる一勝にしてもらいたい。