3戦目 神奈川大学
最初の勝負所である。神奈川大学は、元奨励会員など強い戦力を多数擁している。
大西氏、城尾氏は元奨励会員で鉄板。三宅氏も強豪でうちの主力でも厳しい。さらに本間氏、岩井氏も主力でかなりの力がある。
大西氏は大将固定の位置なので、大将をかわし、主力を下に集めて本間氏、岩井氏を狙いにいった。
当たりは、金城―稲葉、鎌田―城尾、中山―石井、村田―篠原、小川―三宅、松原―本間、栗本―岩井。
何と大西氏は遅刻。副将が絶望、5将も厳しく、大将は互角。3将、4将、6将、7将は有利とみた。
まずは栗本の将棋を見てもらおう。
▲5五歩と仕掛けられた局面。以下、△2二銀▲5八飛△5五歩▲同 銀△4三金右▲5四歩△4二銀となって、先手の銀が無条件に大威張りできる形となってしまった。ここでは△4二金右として、▲5八飛に△5二飛を用意しなければならなかった。その後も居飛車側の構想がまずく、あっさり土俵を割ってしまった。
次に鎌田の将棋を見てもらう。
先手居飛車対後手石田流の終盤戦である。鎌田が6四にいた角を5五に引き、次の8六桂に期待したが・・
以下、△7六桂▲9八玉△4六角▲同角△8八飛▲9七玉△8九飛成▲同銀△8五桂まで、一気に寄せられてしまった。
次に松原の将棋を見てもらう。
先手四間飛車に対して後手は6五歩早仕掛けで対抗してきた。定跡では左図で▲5五歩△同角▲5六銀だが、本譜は▲9五角△8八飛成▲7三角成△7七角成で劣勢になってしまった。ここから、相手の二枚飛車に耐える展開となって、その十数手後の右図。ここで▲4四銀△同歩▲同角となって一気に先手が指しやすくなった。▲4四銀に対しては△5九香成と攻め合われると居飛車がよかったと思う。以下は、松原が冷静に相手の攻めをかわして勝利した。
結果、有利と見ていた中山、村田、松原は勝ったが栗本が負けてしまい、厳しいと見ていた鎌田、小川が負け。さらに互角の金城が負けてしまい、3−4負けを喫してしまった。
4戦目 千葉工業大学
残留が厳しいと見られていた千葉工業大学。ここは勝ち星の稼ぎどころ。
野田氏、久保氏は厳しいが他は取れそうである。
当たりは、鎌田―鈴木、中山―中出、村田―坂本、小川―野田、落合―久保、松原―林、栗本―古川。4、5勝が厳しいが、他は有利だろう。
ここでは鎌田と落合の将棋を見ていただこう。
まずは鎌田の将棋。
左図では銀桂交換の駒得と陣形の差からすでに先手が良い。ここで▲2三歩と垂らしたのが好手でわかりやすく攻めが続く形となった。以下、▲2三歩△3二金▲6一角△4二飛▲2四飛△3三金寄▲2二銀(右図)となって寄せきった。
続いて落合の将棋。相手は主力の久保氏である。
定跡型とは若干違うが、対矢倉の後手番原始棒銀で仕掛けてきた場面。左図から
△6五歩▲5七銀△9五銀▲9六歩△8六歩▲同歩△同銀▲同銀△6六歩▲7七角△8八歩▲同金△6七歩成▲2二角成で右図。
後手の2二角が浮いていたので△8八歩も強く▲同金と取ることができた。以下はしっかりとした指しまわしで安全勝ちとなった。
もう片方の主力に対して小川が負けたものの、他が全て勝って6−1勝ちであった。
この時点で神奈川大学が東京農工大学に負け、4戦全勝が東洋大学のみとなった。
5戦目 東洋大学
この日2つ目の勝負所である。昇級のためには負けられない1戦だ。
相手の主力は苅辺氏、大谷氏、加藤氏、渡辺氏で、かわす余裕がないため全力で勝負することにした。当たりは、
鎌田―竹下、村田―苅辺、神門―古屋、小川―田中、落合―大谷、松原―加藤、栗本―渡辺。
大将と見られていたエースの苅辺氏が副将で出てきたが、下のほうは予想通りの当たりである。
5将が厳しく、副将がやや不利。大将、3将、4将、6将はやや有利。7将は互角である。
大将鎌田は居飛車対三間飛車の戦い。鎌田が居飛車銀冠穴熊に組み、作戦勝ちの展開からミスもあって一時必敗形であったが、最後は穴熊の遠さを生かして勝利。
副将村田は中盤で劣勢になり、終盤で形勢が接近したものの惜しくも届かず負け。
三将神門は相手の居飛車に対し四間飛車で対抗。途中で定跡を外したところ、不利に陥ってしまったが、終盤で妖しく逆転に成功して勝ち。
四将小川の将棋。
三間飛車対居飛車穴熊の戦い。左図ではすでに先手がいいが、ここから△8四飛▲5五歩△同歩▲7七桂△9三桂▲6五桂△8六歩▲5三桂成△8七歩成▲5八飛と進んで右図。左辺の駒を全て捌ききって振り飛車優勢である。終盤もしっかり寄せきって勝ちとなった。
五将落合の将棋は落合の居飛車に対し相手は石田流。作戦負けの展開から自然に押し切られてしまった。
六将松原の将棋。
相手が3四の飛車を1四に動かし、1七の地点を狙っている左図の局面。ここでは6四の拠点が大きく松原がいいと思われるが、以下▲7四飛△7三金となって取れるはずの金に逃げられてしまって一気に劣勢に陥ってしまった。 そして左図から十数手後に迎えた右図。△3七香に対し▲4八金寄と受けた局面だが、ここでは△2九飛▲同玉△2八香▲3九玉△1九竜までの詰みがあったが、相手はこれを逃がしてしまい△3八香成▲同玉と進んだ。依然として先手大劣勢だが、最後はぎりぎり相手玉を即詰みに討ち取って逆転勝ちとなった。
七将栗本は角換わりの将棋で右玉に組んだ。難しい中盤を経て終盤に入ったが、終盤の入り口でミスをしてしまい、そのまま負けとなってしまった。
結果、村田、落合、栗本が負け、鎌田、神門、小川、松原が勝って4−3勝ちとなった。
2日目を終えて5戦全勝の大学は消え、4勝1敗の東工、神奈川、東洋で昇級を争う展開となった。勝数が東工25、神奈川19、東洋23で東工が有利であることと、最終日に神奈川対東洋の直接対決があることから、東工は最終日の中央か千葉のどちらかに勝てばほぼ昇級が決まる。