
「太郎さんのこと」 安井清子
太郎 さんは、2001年7月に、テレビの取材で、Gさんの村を訪れました。
モンの民話語りを大人から子どもへと伝えていくという話でした。
私は通訳で一緒に仕事をしました。太郎さんの海外初仕事だったそうです。
ボソボソっと話すうちに何か面白いことを言っているユーモア。
てきぱきとした快い仕事ぶり。そして、子どもたちがいつのまにか、
子分のようにあとをついていくような優しさ。
山の畑から戻る時、太郎さんは一人迷子になってしまったり・・・
子どもたちに連れて帰ってもらったり・・・
村長には「娘の婿にならないか?」と言われたり・・・
と、モンの人たちにとても親しみを持たれていました。
本当に気持ちのいい方でした。
太郎さんは、その人柄と仕事ぶりが買われたのでしょう。
その後、海外取材が立て続けに入ってとても忙しくなったようです。
しかし、太郎さんは2002年10月、テレビ番組取材中に、
パキスタンの北部で、車の転落事故に遭い亡くなりました。28歳でした。
太郎さんのお母さまとは、
事故をきっかけに手紙をやりとりするようになりました。
そして、いつからか、「モンの村に図書館を建てることができないか」と
お手紙に書いてこられ、わたしたちは、太郎の図書館(仮称)
をGさんの村に作ろう!と思うに至ったのでした。
「太郎が存在したから、この場所がある」ということ。
一人の存在がみんなを動かし、
小さなことでも大きなことにつながっていくように、
一人の人間の存在と生命の重さをこめて、活動していきたいと思っています。