My Fish Library (第6回 2004 / 07

オニベニハゼ

邂逅 V

 

 出会いシリーズの第3弾は「オニベニハゼ」です。伊豆海洋公園や伊豆大島でも見つかっているのですが、ここで紹介するのは錦江湾の個体です。Tour Logに載せるにはあまりにインパクトが強すぎると思ったので、特集コーナーに出てもらうことにしました。
 ベニハゼは色彩のバリエーションが豊かな仲間が多いのですが、なかでもオニベニハゼの美しさはかなりのものだと思います。おまけにベニハゼとしては大きく(5cmくらいあるのではないかと思われるようなのもいます)、存在感十分です。見られるのはおおよそ-40m以深。モエギハゼやピンクダートクラスに深くはないですが、一応、ディープダイビングといえる水深になってしまいます。まあでも、こういう生物がいるからこそ、ディープダイビングはやめられないわけです。別に深く潜るのが好きでディープダイビングをやってるわけじゃないですしね。

 

 錦江湾のポイントには桜島の溶岩が流れ出してそのまま固まってしまったようなところがあり、全体的に暗くて、そこがまた一気におちこむドロップオフのようになっていて、潜行していくときには、ブラックホールに吸い込まれていくようです。(当然、全てのポイントがそうではないです。)
 浅いと-35mくらいからオニベニハゼを見かけることができるのですが、伊豆の海と比べても暗くて、深海にいるような感覚になります。そんな中でライトを照らすと、あちらこちらの岩肌にこのオニベニハゼやナガシメベニハゼ(仮称)がとまっていて、ヤノウキハゼの「泥の里」に来たときと同じく、どこかでワープして異次元の壁を越え、彼らの「里」に”到着した”気分になります。
 静かで、暗くて、僕たちの騒々しいストレス満載の現実世界とは全く趣をことにする別世界ですよね。そんな世界に彼らのような美しい生き物がたむろしている、幻想的ですよね。

 ダイビングの素晴らしさのひとつは、この現実世界からのギャップ感覚を手軽に手に入れることができることだと思います。
 アカネハナゴイなどの舞う明るい珊瑚礁の海も心を癒してくれますが、ブルーバードやアカタチが舞う「幻妖の里」、ヤノウキホシハゼの「泥の里」、それから、今回紹介したオニベニハゼの「暗闇の里」など、まぶしい美しさはないけれど、心に深い落ち着きをくれるような気がします。