My Fish Library (第9回 2005 / 03

イサゴハゼ

Gift

 

 この特集のコーナーは第2回目のコンシボリガイを除いて、全てハゼばっかりで、結局は”My Gobies' Library"と化していて、でもまあ、やってる本人がハゼフェチだから仕方ないなとも思い直してみたりしていますが、今回もまたまたハゼとなってしまいました。
 というわけで、写真のハゼは「イサゴハゼ」。三保のテツさんから教えられて、「日本のハゼ」をみて改めて、その存在に気がついたわけなのですが、外見、色合いといいちょっとハゼのカテゴリー・スペックとしてはかなり異色な感じがします。個人的にはかなり新鮮でした。「日本のハゼ」には分布は伊豆半島から琉球列島までと書いてあるので、そんなに希少種というわけでもないのでしょうが、特に真新しさを感じたのは、その「色合い」です。写真ではうまく伝わらないかもしれないですが、微妙に「青い」のです。「日本のハゼ」の個体は西表の個体で珊瑚礁特有の白砂の中に生息していたのか、やや透明感を持っていますが、三保で見たこの個体は全体に青みがかっていて、この色合いはハゼでは珍しいと思います。

 

 このイサゴハゼ、普段は砂利の中に隠れているらしくて、砂利の中を探しているとたまたまピョコンと飛び出してきました。表に出ているときは、強烈に落ち着きがなくて、ピュンピュン跳ねるので、写真は非常に撮りづらいです。ほかのクモハゼなんかと同じで身体を寄せられる小石をそばにおいてやると少し落ち着いてくれます。
 写真が出来上がってきて、よく見て気づいたのは、身体の模様が実に面白いということです。なんだか新幹線みたいじゃないですか。それでもってあごの下には少しひげがあって、なんとも愛らしい。ずっと会いたい、会いたいと思っていて、やっと会えたハゴロモハゼのようなアイドル系ではなく、彼の場合、初めてあって好きになったいわば「素人系一目ぼれ的出会い」というわけですね。多分わかる人にしか、わからないと思うんですが、自分にとってはモヨウシノビハゼなんかも同じポジショニングなのです。

 彼と出会うことができたのは、2004年のラストダイブの三保でした。1週間前にパラオで潜ってきて1年の締めくくりにハゴロモハゼ属一種の写真を頑張ってとろうと思って潜ったダイビングでの贈り物(ギフト)です。その日は午前中、あいにくの海況で海中も暗く、雨が降っていました。お昼ごはんを食べて、2本目に入ろうとしたとき、雨もやみ、薄日が差して、海が妙に静かでした。なんとなく、もしかしたらいい出会いがあるかも・・・と思った矢先のことだったのです。

 12月29日ともなれば、もう世の中、バケーションムードなので近場のダイビングエリアはどちらかというと貸切に近くなってくるのですが、そんな時でも潜りにきたことに対するご褒美なのかもしれません。実は2年前のラストダイブ(これも12月28日)も三保だったのですが、その時にもソメンヤドカリ+ベニヒモイソギンチャクに共生するカクレエビ亜科の一種に出会うことができました。伊豆の海はなんといっても、盛り上がってくるのは秋からで、そのクライマックスが実は12月なんだと思います。フリソデエビやクマドリイザリウオなど、死滅回遊系でもどちらかというとビッグネームが出現するのは12月が多いような気がします。寒くても、一生懸命通う分には福があるんでしょうね。