My Fish Library (第12回 2005 / 12

ハゴロモハゼ属の一種

〜 開運の潮 〜

 

 このコラムを書いているのは2005年の12月中旬で、この後、ちょっと長めのツアーがあるのを考慮すると、多分今年はもう多分三保にはいけないかなぁと思う。そう考えると、今年は三保に行ったのは2回でここ数年の中ではちょっと少なくなってしまった。秋口から、足繁く通おうと狙っていたのだけど、仕事がそれを許してくれなくなってしまった。(残念)
 ただ、回数と釣果が必ずしも比例しないところが、自然を相手にするダイビングの醍醐味のひとつ。2回とはいえ、中身は随分濃かったのではないかと思う。今年の初回の三保は前回のこのコラムに掲載したアカハゼとの出会いがあり、11月に訪れた時には、「ハゴロモハゼ属の一種」が間近で出迎えてくれた。

 

 このハゼとの出会いは(ログブックを見返してみると)99年に遡ってしまう。ダイビング雑誌ではそれ以前からみかけていたのだが、かなりのレア種的な感覚があった。大瀬崎の泥地で一度見かけた後、土肥の湾内に、いついていることがわかり、これは「モノ」にしないと、と思いかなり通いつめた。その当時はまだ、「ヤツシハゼ属の一種」と紹介されていた。種類的にはブルーシュリンプゴビーに近いようなので、それからすると「ヤツシハゼ」は不明種をとりあえず分類しておくにはなんとも便利な“種族”なんだろう。
 色合いは派手ではないが、なんともクールで上品な感じだ。泥地でホバリングしている姿は「幽玄」という言葉がぴったりくる。ただ、シゲハゼほどではないのだけど、温帯域に生息する共生ハゼの中ではかなり警戒心が強いほうに入り、なかなか近寄らせてくれない。2〜3度、かなり近いところまで寄れたけれど、その時は105mmでの撮影だった。今回はテレコンだったけれど、ほぼ最短まで近寄らせてくれた。エキジットした後、鉄さんが「この潮がくると調子がいいんですよね」とコメントしてたが、確かに潜った時は、上げ潮で、引っ込んでも引っ込んでもすぐに顔を突き出してきて、最後にはストロボがバシバシあたっても、気にしなくなってしまった。上げ潮はハゼ達に食事を提供するため、彼らはかなり機嫌がよくなるのだが、それにしても・・・という感じだったように思う。この時期こその上げ潮ということなんだろうか、改めて“開運の潮”だなと、有難く思った次第である。

 何度通ってもうまく撮れない事もあるし、たまに行ったときに「当たり」が来ることもある。多分、長く同じところに潜ってデータを持っている人でも、その「当たり」を呼び込む自然条件がそろうかどうかは、神のみぞ知るというところだと思う。1000本以上を越えて潜っているダイバー達はこの、この「当たり」の快感をみんな知っているからこそ、抜け出せなくなっているのだと思う。とはいえ、アカハゼといい、ハゴロモハゼ属の一種といい、こんな素敵な出会いをくれた三保の海と鉄さんにはこの場を借りて感謝をしたい。
 回数は少なかったけど、自分にとってのホームグラウンドはやっぱり三保。鉄さんも言ってたけど、そのホームグラウンドにこんな素敵なハゼがいることを幸せに思う。