心のままに

     いのち満点

           100本の薔薇。 

想像するだけで、優美な甘い香りが部屋中に漂う。

         私の祖母は、102歳。
  さすがに足が弱っていて、現在は病院生活を送っている。
  たまに見舞いに行くと、満面の笑みで迎えてくれる。

突然 ナースコールで忙しい看護婦さんを呼び出した。
小走りに駆けつけた 私よりはるかに若い白衣の天使に

         「孫じゃ。可愛いじゃろう?」
   一瞬固まりつつも、冷や汗を隠す私

先生から
        「二十歳のお尻だね。」
   と誉められたと、平気で自慢している。
それも 2年前からずっと。

そんな祖母も、今年の秋には103本の薔薇に囲まれる。
ちょこんと顔を出した 貴女を足して104本。
豪華な薔薇の、しわくちゃの顔を想像してみると、滑稽でもある。
その薔薇1本1本に刻まれた、貴女の人生はどんなだったのだろう。

        「103歳なんて、屁みたいなもんじゃ」

     「佛さまはね、何より笑顔が好きなんじゃあ。」

  そう言って、ただただ笑っている。

    まるで私の今の心を、見透かしたかのように・・・

   悩んでなんかいられない。
   104本の薔薇にかなう訳はないけれど。

   お土産の笑顔。
         いのち乾杯。
              いのち満点。

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