心のままに

       

      みよちゃんからの電話



 携帯が 鳴る
 ちろろ〜ん ちろろ〜ん♪
みよちゃんからだ

 (もしもし みよちゃん 元気? 朝ご飯 食べた?)
  「食べましたよ〜 ご飯とお味噌汁 あと 赤い林檎」

  あらあら 卵焼きか 焼き魚あったはずよ?

私の叔母は 綺麗な博多美人。  だった。。。
 みよこ叔母さん。
私が 憧れている 理知的でお洒落で 可愛い人。  だった。。。

じわじわと そして 急激に痴呆症が現れるのには そう時間がかからなかった。
そして今 施設のお部屋で 大好きなお花に 2時間ごとに水をやりながら
 「元気がなくなったねえ。 もっと お水あげなくちゃ」
そう 言いながら また 根腐れしそうな鉢植えのお花に 水を注ぐ。

 私は それを止めることなんて できない。

 彼女の愛して育てた蘭は 見事だった。
寒い冬には 温室に並べたり それでも足りない子は 炬燵に入っていたのを
 私は知っている。

 ずいぶん前に亡くした叔父のことは すっかり忘れているのに お庭の木や
 蘭の事は しっかりと気になるらしく
  「ちょっと ここに遊びに来たけど 明日は家に帰らんとねえ」

 (今 寒いからね もうちょっと暖かくなってでいいよ)
   と私。

思えば 昨年冬から
 (暖かくなったらね)
      (いい季節になったら ね)
         (涼しくなったらね)

その度に 私の胸が 季節関係なく きゅんと熱いのだか 冷たいのだか
解らないものが こみ上げてくる。

 お正月。

 (みよちゃん 明けましておめでとうございます)
誰のことも すでに認識できない みよちゃんが 言った
 「お正月には 凧揚げて〜♪」
   「綺麗な羽子板 飾りましょう〜♪」

 私が 年末に可愛い 博多羽子板を 飾りに行った時
  「貴女 女学校時代の 〇〇さんでしょう?」って。

   うんうん 私は 毎回 みよちゃんの思い出ある人であって
  いいからね。

今でも 素敵な みよちゃんです。
 貴女の世界は いつも 輝いているからね。

  みよちゃんからの 電話は
もしかしたら 天使からの 電話かもしれない。

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