フレンチの部屋

サ・ヴァ、サ・ヴィアン (ピエール・バルー)
学生の頃からフランス人の持つ感性に憧れていた。クールで大人っぽくてお洒落だと思ったからだ。他の人がブルース・スプリングスティーンだの、ホール&オーツだの、デュラン・デュラン(いずれも好きですが)を聞いている頃に僕はひそかにフランソワーズ・アルディとかを聞いていた(PILも聞いていたが)。そんな頃、また違ったフランス人のイメージを教えてくれたのがピエール・バルーだった。バルーとの出会いは「男と女」のサウンドトラックからである。中古盤屋で購入した(他にフランク・ザッパのチャンガの復讐も買ったが・・)アナログLPのサントラはフランシス・レイの名義だが、バルーの歌うサンバ・サラヴァ(バーデン・パウエル共作)が入っていた。その頃好きだった高橋ユキヒロの影響もあったんだと思う。ユキヒロのシングル「四月の魚」にもバルーは参加しているし、YMOやムーンライダーズをバックに従え「ル・ポレン」というアルバムもこの頃発表された。その頃に、この「サ・ヴァ、サ・ヴィアン」を購入した。子供を肩車しギターを弾くバルーの写真に惹かれた。裏ジャケは、くたびれた犬を抱きかかえ恐い顔をしているバルーの写真。素朴でいい感じだ。内容も彼の優しい人柄が伝わってくる曲ばかりだ。フランスにボサ・ノヴァを広めた人として有名なバルーが歌うA.Cジョビンの「おいしい水」が良い。なんともいえない憂いがある。「パリ・ウェリントン」も良い。商業主義を嫌い、いろんな人々や音楽などとの出会いを求めて世界中を旅するバルー、自然を愛し少年の様な心を持つバルー、自分でレーベルを起こし無名なアーティストたちに活動の場を与えるバルー。かっこいい大人だ。それから年月は流れ大都会の片隅で細々と生きていた僕に嬉しい出来事があった。自分の住んでいる地区でバルーがサラヴァレーベルのアーティストたちと一緒にコンサートを開いたのだった。そしてコンサート後にサイン会があり、僕の名前をいれてバルーからサインを貰ったのだった。その時の印象は、まったく気取りが無く優しくて温かい感じ。レコードから受ける印象と同じだった。バルーは今でも、いろいろな人や音楽との出会いを求めて世界中を旅しているだろう。