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2008年G8サミットの候補地
(北海道新聞 2007年3月9日)

 北海道が2008年に日本で開催されるG8サミット(主要国首脳会議)の開催地に名乗りを上げた。私は,この「洞爺湖サミット」案は,すでに誘致活動を進めている「関西サミット」(大阪,京都,兵庫各府県),「開港都市サミット」(横浜,新潟両市),「瀬戸内サミット」(岡山,香川両県)の各案に比べ,より条件が整っていると思う。なにしろ,よく「隔絶」されているのだ。

 もともとサミットは,国内の主要都市をめぐるようにして開催されることが多かった。首都での開催も珍しくなく,実際,日本の開催地は,2000年の沖縄サミットを除けば,三回とも東京の迎賓館であった(1979年,86年,93年)。

 選考基準に決定的な変化がもたらされたのは,2000年の沖縄サミットと翌2001年のジェノバ・サミット(イタリア)によってである。

 沖縄サミットでは,米軍基地が近くにあることもあり,警備を優先させて,始めて本格的に隔絶した会場で首脳会談が行われた。対照的に,街中で開かれた翌年のジェノバ・サミットでは,会場付近に押し寄せた過激なNGO(非政府組織)と警官隊とのトラブルが続出し,一人の死者と約600人の負傷者が出た。この対比が関係者の記憶にまだ新しい頃,アメリカで同時多発テロが起きたのである。これで,その後のサミット開催地の決定条件は「まず警備」となった。そして,これ以降は,都市の名前が付いたサミットでも,会場は隔絶された場所にあるホテルなどになるのが当たり前になった。

 サミットは,1975年に始まった当初,先進国の経済協調や西側諸国の政治的結束を示す儀礼の側面を色濃く持っていた。だが,国際連合の機能低下や改革停滞が進む中,アメリカの一国支配でも200か国の多数決でもない「現実的メカニズム」が必要な時代になった。それが「主要国」による意見調整の場であるサミットの現代的意義である。

 G8(8か国)サミットと呼ばれるが,最近の会議には,主要8か国とEUの首脳に加えて,中国やインドなどの新興5か国の首脳,さらには国連など国際機関の長がやってくる。今や,地球規模の問題について指針を決める重要な場になっているのである。首脳同士のホンネの意見調整に,隔離された場所が好都合なのは言うまでもない。「隔絶型」が一般化したのには,こうした要因もあった。

 2008年のサミットの主要議題は「環境」である。2005年のグレンイーグルズ・サミット(イギリス)で,地球温暖化については各国の対策などを2008年のサミットで報告しあうと決めてしまったからだ。そういうサミットなのに,首脳たちが窓から見るながめが街並みでは開催国のセンスが疑われる。だから,今回はとりわけ風光明媚な「完全隔絶型」が有利となるはずだ。

 もちろん,隔絶されていればよいというものでもない。多忙な首脳たちがやってくる以上,利便性も重要な要素となる。国際空港に,上空の防衛ができる航空自衛隊基地が隣接する千歳周辺は,とても有力な候補地だと私は思う。

 北海道にとっての「悪い話」がないわけではない。ここ三年ほどのサミット開催地には各国首脳の「故郷への想い」が込められている。今年ドイツで開かれるサミットも,メルケル首相が生まれたハンブルクの近くで,しかも彼女が人生の大半を過ごした旧東ドイツ領内から選ばれている。昨年のロシアの開催地サンクトペテルブルクは,プーチン大統領が生まれ,学び,そして副市長を務めたところだ(実際の会議場はサンクトペテルブルク郊外)。

 とはいえ,参議院選挙の直前に自分の出身地付近に国際会議を誘致することを発表するほど,安倍首相も愚かではあるまい。洞爺湖町を選挙区とするのは,民主党幹事長の鳩山由紀夫氏である。安倍首相も敵に塩を送るくらいの余裕を示したほうが,支持率アップに役立つのではないか。

 ちなみに,サミットはなにも首脳会議だけではない。いくつもの関連閣僚会議が一年を通じて開かれる。私は少なくとも環境大臣の会議は,ラムサール条約登録湿地である釧路湿原の周辺で開催してほしいと願っている。


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