高瀬淳一HP

Home> G8サミット:サミット−歴史に残る洞爺湖

サミット−歴史に残る洞爺湖
(北海道新聞 2008年1月7日)

 2008年1月1日から、G8サミット(主要国首脳会議)の議長国が日本になった。今年一年、G8の枠組みだけでも、七つの閣僚会議や多くの事前会議・専門家会議が日本で開催される。言うまでもなく、そのメインイベントとなるのは、7月7日から9日にかけて北海道洞爺湖地区で開かれる首脳会議である。

 G8サミットの最大の存在意義は、なによりも地球規模の課題にかんする意思決定機関であることに求められるだろう。サミットは、1975年に先進国の経済調整のメカニズムとして産声をあげた。そしてその後は、ソ連に対抗する西側諸国の政治的団結を示す場としても活用された。だが、今では途上国支援や環境など、国際社会全体にかかわる問題に取り組む場となっている。それゆえ私は、サミットを「グローバル政治の司令塔」と呼んでいる。

 このサミットについては、少数の国だけで国際問題を決めていることに対する批判がある。だが、かりに一つの覇権国による支配が望ましくなく、また200近い国の多数決が現実的でないとすれば、「主要国」の会議は唯一採りうる現実的な選択肢なのではないのか。アメリカ一国主義も国連的な一国一票主義も有効に機能しないのであれば、こうした中間的な意思決定メカニズムの重要性が高まるのは当然だろう。

 しかも最近は、八か国の代表による会議に加え、新興国の代表として中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ共和国の首脳を招いて、最終日に「拡大サミット」の会合を開くのが恒例化している。いわゆる「G8+5」の会合である。

 これにより、サミットは経済的にも政治的にも文字通り「主要国」を網羅するメカニズムとなった。事実、経済的に見れば、この13か国は、いわゆる経済大国はもちろん、新興国の代名詞であるBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)をすべて含んでいる。また政治的には、国連安保理の常任理事国五か国(米ロ英仏中)に加え、常任理事国入りを模索した「G4グループ」、すなわち日本、ドイツ、インド、ブラジルを含んでいる。8+5の制度化は、先進国と新興国の経済的・政治的対立を避け、グローバル化した国際環境を整えるためには不可避の方向性なのだろうと私は考えている。

 さらに、サミットには国連事務総長やEU委員長などの国際機関の長が参加する。アフリカからも数人の首脳が参加する。今やサミットは単なる八か国首脳の内輪の集まりではないのである。おそらく、自己改革ができない国連に代わるがごとく、G8サミットはこれからも重要性を増していくことだろう。

 国連との比較で言えば、もう一つ重要なポイントがある。サミットでは中心的担い手が外交官ではなく政治家なのだ。

 内政と外交が密接にリンクしている現在、政治的判断ができる人物が集まって協議し、方針を決定することの意義は大きい。国際会議での首脳の約束は国内でも重みをもって受けとめられる。そのため、国内調整がしやすいのである。しかも多くの首脳は、次のサミットにも参加する。恥をかきたくなければ、前年に約束した事柄の少なくとも一部は実行しなければならなくなる。官僚たちも自国のリーダーのメンツの維持に協力せざるをえなくなる。サミットでの決定は、ゆえに実行力をもちやすいのである。

 洞爺湖で行われるのは、年に一度の宴会のようなものではない。開かれるのは、力をもった国々のトップが集まり、地球規模の課題に対する現実的かつ有効な対応策を協議する会議なのである。重要な決定が得られれば、洞爺湖サミットの名は歴史に残る。そういう重要な会議が今年北海道で開催されることを、道民諸氏にはぜひ誇りをもって受けとめてもらいたいと私は願っている。


Copyright © by Junichi Takase(高瀬淳一) 無断転載はご遠慮ください。