恩給法等の一部を改正する法律案審議

第166国会・参議院・総務委員会 議事録 抜粋   平成19年3月29日

出席者 委員長 山内 俊夫君 理事 景山俊太郎君 二之湯智君
                  伊藤基隆君  那谷屋正義君
委員 小野清子君 尾辻秀久君 河合常則君  木村仁君  世耕弘成君
   山崎力君  山本順三君 吉村剛太郎君 芝博一君  高嶋良充君
   高橋千秋君 内藤正光君 澤雄二君   遠山清彦君 吉川春子君
   又市征治君 長谷川憲正君
国務大臣  総務大臣・・・・・・・・菅義偉君 
事務局側  常任委員会専門員・・・・高山達郎君
政府参考人 総務省人事・恩給局長・・戸谷好秀君
      外務大臣官房審議官・・・本田悦朗君
      厚生労働大臣官房審議官・荒井和夫君

本日の会議に付した案件
○恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
   
伊藤基隆君 民主党参議院議員
過去、恩給法改正は、関係する多くの人々の注目を集め、社会的にも政治的にも
大きな課題であった時期が長く続いた。終戦から60年を超える時間を経て、
恩給受給者の高齢化が一層進み、恩給受給者数の減少が顕著となってまいりました。

今日、恩給が果たしてきた社会的役割は最終局面に入ったとも言える時期を迎えて
います。また、制度的にも、今回の恩給法の改正に、恩給受給者から懸案として
是正が要望されてきた扶助料制度間の不均衡是正や、年額改定方式を公的年金の
引上げ率により自動的な改定を行う方式に改めることが盛り込まれたため、
これが最後の改正になるのではないかとも伝えられております。

まず恩給の実態についてお聞きして、次に法案の内容について質問を進めたいと
思います。

全恩給の恩給受給者の数は現在105万6000人、
旧軍人はこのうち97.5%に当たる103万人、
恩給受給者の平均年齢は84.9歳、
平均年額は85万1000円と理解しております。

現状についてもう少し詳しく、本人に対する給付である恩給と、
遺族となった配偶者等に給付される扶助料の給付者数と比率、
それぞれの平均年額等について御説明いただきたいと思います。

また、近年の恩給受給者の高齢化に伴い、従来と比較して
扶助料の比率に変化が生じているか、お答えください。

さらに、公務で死亡された方々、あるいは公務で傷病者となった方々の
恩給や扶助料の現状についてお聞きいたします。

政府参考人 戸谷好秀君 総務省人事・恩給局長
私の方から御報告申します。

まず、平成19年度予算における恩給の受給者数、
先ほど105万6000人という数字が出ており、
97.5%に当たる103万人が旧軍人でございます。

この旧軍人恩給の本人、遺族別の受給者数等は、
本人は24万4000人、23.7%、四分の一弱でございます。
これに対しまして、遺族は78万6000人、約76.3%という
数字になっております。

受給者の高齢化とともに、遺族扶助料受給者の方々の比率が
高くなってきております。ここ5年で66.7%から
76.3%、約一割高くなったいう状況でございます。

次に、本人に対する給付の平均年額でございます。
この平均年額は約79万円と算定をいたしております。
遺族に対する給付の平均年額は約85万円と、
本人に対する給付より少し高い額となっております。

やや意外な数字とも見えますが、これは、
本人受給者の大部分の方が実在職年が12年に満たない、
短期在職普通恩給受給者であるからこの数字になっています。

次に、旧軍人恩給の現状について、恩給の種類別を見ますと、
まず第一に、戦没者の遺族は公務扶助料受給者で約10万人です。
平均年額が約197万円になっております。

次に、戦争で傷病を負われた方々に対する恩給です。
比較的重症の方は増加恩給という形で受給しております。
この方々は約1万人、平均年額は約334万円です。
この方々が平病死されますと、遺族に増加非公死扶助料
という形の扶助料が受給されます。この方々が約2万人、
平均年額は約156万円となっています。

それから、比較的軽症の方には傷病年金という名前で
支給しております。この方々が約2万人、
平均年額は約131万円。その遺族に支給される
傷病者遺族特別年金、この受給者が約2万人で、
平均年額は約50万円となっております。

最後に、必要在職年を満たした後に退職した
普通恩給受給者の方が約22万人、
平均年額が65万円。その遺族に対する
普通扶助料の受給者が約63万人で、
平均年額は約61万円という数字になっております。

伊藤基隆君 民主党参議院議員 
一口に恩給と言っても、大変多岐にわたっているわけでありますね。
次に、恩給受給者の平均年齢は85五歳に達しようとしておりますが、
国会図書館の立法考査局に人口統計の技術を使って試算を行って
もらったところ、この年齢の場合は、6年から7年後には半減、
10年から11年後には四分の一に減少するという推定が成り立つ
そうであります。

恩給受給者数が最も多かったのは1969年、昭和四十四年の
282万人ということだそうですが、これと比較すると、
これから最後の10年を迎えることになるとの印象を強くする
わけであります。

まず、今後の恩給受給者の数や恩給の総額について
どのような見通しを持っているか、お聞きいたします。

政府参考人 戸谷好秀君 総務省人事・恩給局長
まず、恩給受給者数の長期的推計でございます。

5年後の平成24年度で70万人ということです。
今年100万人余ですので、5年後は7割ぐらいという数字が出ていす。

恩給費は5年後の平成24年度には、約6000億円程度と試算されています。

伊藤基隆君 民主党参議院議員
旧軍人遺族等の恩給が1953年に復活して、現在まで55年間にわたって
給付が継続されていますが、これまで毎年支払われてきた恩給費の総額は
幾らになるんでしょうか。

政府参考人 戸谷好秀君 総務省人事・恩給局長
旧軍人遺族等に支払われる恩給費という予算の項目があります。
昭和28年から計上しております。
昭和28年から現在までの予算、そのまま積み上げますと、
約47兆円という数字が計算上出ています。

伊藤基隆君 民主党参議院議員 
47兆円、この金額を年度ごとに消費者物価指数を使って
現在の物価に当てはめると60兆5000億円という計算になります。

来年度の一般会計予算が83兆円弱ですから、1年間の国の予算の
七割から八割に相当する金額が1953年から今日までの55年間に
支払われてきたことになります。

吉川春子君 共産党参議院議員
日本共産党の吉川春子です。

戦前の恩給制度がGHQの命令で廃止され、占領政策終了後に
軍人恩給が復活しました。今日まで支払われた恩給総額は47兆円
という報告が今ありました。第二次大戦、太平洋戦争で、
東京など各都市の大空襲、原爆、満蒙開拓団、残留孤児、
従軍看護婦、従軍慰安婦等、幾多の犠牲者を出しましたけれども、
こちらの方はほとんど国家補償はされていません。

この理由として政府は、戦争被害は国民ひとしく受容すべき損害で
あるというふうに言って戦後補償を拒んでまいりました。
戦争犠牲者として、なぜ軍人恩給と同じような考えが
これらの戦争犠牲者に、被害者に対しても取れなかったのか、
その点について、大臣の見解を伺います。

国務大臣 菅義偉君 
さきの大戦においては、すべての国民が、程度の差はあれ、
何らかの戦争の犠牲を被って、一般市民の中にも筆舌に尽くし難い
労苦を体験された方が多数あるということを私自身も
承知をいたしております。
政府としては可能な限りの措置を講じてきたところでありますけれども、
戦争損害という事柄の性格上、対応にはおのずから
限界があるものと考えております。

一方、国の命令で軍務に服し、尊い命をささげ、
あるいは生命の危険を冒して国のために尽くした者に対して、
国として誠意を持って処遇するということは
一定の理由があるものと考えており、
国としての対応の面で違いが出るのはある意味では
やむを得ないものではないかなというふうに思っております。

御指摘の一般戦災者の問題も含めて、いわゆる戦後処理の問題に
つきましては、もはやこれ以上国において措置をするものはないという方針に
よって対処してきたものと承知をいたしております。

今日の我が国の平和と繁栄が、
さきの大戦における多くの犠牲と御労苦の上に築かれたものであることを
私どもは忘れずに、国会の運営、また次の世代にしっかりと
引き継いでいく必要があるというふうに考えております。

吉川春子君 共産党参議院議員 
満蒙開拓団、終戦とともに見捨てられた人々、そしてまた
従軍看護婦、いろいろ考えますと、今の大臣の答弁では納得できません。
シベリア抑留の問題について伺います。いわゆるシベリア抑留基金は
廃止されたけれども、問題は解決しておりません。

軍人恩給の職業軍人等の手厚い処遇の一方で、
抑留者、恩給欠格者等は余りにも粗末に扱われているのではないか、
全抑協の皆さんは新たな立法を求めて運動を展開されています。

そこで、まず厚労省に伺いますけれども、
シベリア抑留者の中には民間人が含まれています。
それは何人ですか。それから、シベリア抑留者総数と、
その中で軍人軍属は何人か、明らかにしていただきたいと思います。

政府参考人 荒井和夫君 厚生労働大臣官房審議官
御質問にお答え申し上げます。
 
厚生労働省においては、旧ソ連地域に抑留された方々は56万1000人
と推計しております。そのうちの、軍人軍属と一般邦人の内訳については、
確たる数字は把握していません。

ただ、旧ソ連地域それからモンゴルから引き揚げてきた方に関しましては、
その引揚げ手続の中で、その数を累計してその結果として出てきた記録に
よりますと、軍人軍属が45万3800人、一般邦人が1万9200人です。

以上