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細菌とウィルス(ビールス)の違いって? |
日常、ウィルス(ビールス)という言葉はコンピューターウィルスの広がりで耳にすることが多くなってきていると思いますが、このお話は人間の体に病気を引き起こすウィルスの話です。 風邪の原因は? 日常の診察の中で風邪は多い病気です。風邪という病気は、大半がウィルスが原因で起こります。 ウィルスといっても種類がたくさんあって、原因になるウィルスの種類によって症状が咳だったり鼻水だったり下痢だったり変化します。 風邪は大半はとくに治療をしなくても治ってしまいます。薬を出す場合にはつらい症状を抑える治療(対症療法)が中心になります。 風邪の薬というのは症状を抑える薬であって風邪を治す薬というのはありません。 点滴も風邪で食欲がなく食べることができないと脱水になっている場合があり、そういうときには脱水を改善する効果はありますが、あくまでも風邪を治すわけではありません。 風邪を治すのは自分の体の免疫力です。 風邪で受診される患者さまの中に抗生物質を希望される方が少なからずみえます。 では、抗生物質というのはどういうものでしょう? ウィルスと細菌の違い 人間の体に感染していろいろな病気を起こしてくる病原体の代表はウィルスと細菌です。 抗生物質の働きを理解する上でこの二つの病原体の違いを理解することはとても重要です。 ウィルスというのは生物と、単なる物(無生物)との中間にあたるような存在です。 細菌は自分の遺伝情報(=DNA)とそれを複製(増やす)するための工場(=細胞)から成り立っています。 ウィルスには自分の遺伝情報、DNAはもっていますが、それを複製するための工場(=細胞)がありません。 ではどうやって自分を増やすのかというと、人間の細胞に間借りして人間の細胞を利用して増えるのです。 抗生物質はどういう薬? ここで元の話に戻りますが、では抗生物質はどういう働きをするのでしょう? 抗生物質は、細菌が持っているDNAの複製工場、つまり細菌の細胞の働きを止めてしまう薬なのです。 風邪の場合に抗生物質は効くのでしょうか? 結論から言うと大半の風邪には抗生物質は効きません。 それは風邪のほとんどはウィルスが原因だからです。 ウィルスは人間の体の細胞を利用して増えます。 もし人間の細胞の働きを止めてしまったら人間の命そのものをとめることになりますので、そんな薬は存在しません。 ウィルスが原因で起こってくる風邪には抗生物質は効かないのです。 これまで医療の現場で抗生物質はあまりにも安易に大量に使われすぎています。 最近マスコミで話題になっているMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などもこの抗生物質の大量使用の副産物です。 黄色ブドウ球菌という菌は人間の皮膚にはごく普通に存在する菌です。MRSAという名前に含まれるメチシリンというのは抗生物質の一種ですが、あまりに大量に、頻繁に抗生物質が使われるため、細菌がこの抗生物質に対する抵抗力を持ってしまったということです。 MRSA以外にも抗生物質が効かなくなってきて問題になっている細菌はたくさんあります。 クリニックでは極力抗生物質を使用しないように心がけています。 それは今まで書いたような無意味に細菌を強力にすることを避けるためです。 どんなときに抗生物質が必要? 風邪の中にもまれに細菌が原因で起こってくるものもあります。 良い例は溶連菌です。これはのどの痛み、発熱などを起こす原因になる細菌です。 溶連菌の感染が原因で風邪症状が起こっている場合には、まれな合併症が起こることを避けるために10日から14日間の抗生物質の内服が勧められています。 医師は診察してその風邪が抗生物質が必要な状態かどうかを判断しています。 正しい情報を得て判断を! 一般の方が思っているよりもずっと医学にはわからないことがたくさんあります。 どんな診断、治療にも100%ということは存在しません。100%といえることは人間はいつか死ぬということだけだといっても過言ではありません。 そこで大切なのは納得して医療を受ける、自分で選択するということだと思います。 抗生物質についても軽い風邪で毎回抗生物質を飲むということは長い目で見れば結局は細菌を強め、自分の首をしめることになると思いますが、それぞれの事情で飲まないことに不安があれば相談に乗ります。 場合によってはこちらから抗生物質を飲むことを積極的にお勧めしない場合でも薬を出すこともあります。 不安なことがあれば気軽に聞いてください。 |
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