●ネック折れ Rickenbacker 325
ネック折れ修理のご紹介です。ネック折れは、人為的に起ってしまうもので、角度つきのマホガニーネックに多く見られます。マホガニーは、軟らかい材のため硬いメイプル材と比較すると非常に折れやすいです。持ち運びの際など、弦を張ったままでもハードケースにしまっておけば倒しても大丈夫だと思われがちですが、弦の張力は何十キロもあるため、ハードケースでも弦をゆるめる事をお勧めします。また、折ってしまった場合は、早期修理をお勧めします。放置してしまうと折れた部分が湿気や乾燥などで変形してしまい、綺麗に接着できなくなると共に強度にも関係する恐れがあります。ネック折れは、ただ接着するだけの簡単な修理と思われる方もいると思いますが、実際は圧着する際の力のかけ具合など高度な技術が必要になります。また、折れ方、仕上げなどにより修理方法、修理金額が様々です。宮田工房では様々な角度からギターをチェックしてお見積りをたて、お客様に納得を頂いた上で作業を進めていきます。
今回は、リッケンバッカーのネックジョイント部のネック折れをご紹介します。接着、補強、塗装の修理になります。その他にボディのクリーニングとキズ取りも行ないました。
初めに、折れた部分の木片や塗装の破片など細かく調べていきます。今回は、綺麗に折れ、飛んだ破片もきちんととってあったため比較的作業はスムースに進みました。その際、木片など修正できる部分は先に修正します。
接着面積から接着のみだと危険なため補強をします。補強材の穴をあけます。穴は、強度を考慮し斜めにあけます。補強材を接着します。そのまま塗装をしても、時間が経ち塗装が引けてくると丸く跡が出てくるため、目立たなくするためにつき板を貼ります。このようなことで修理跡をなるべく目立たなくします。
接着は、慎重に行ないます。初めに接着剤をつけない状態で圧着し、確実な方法を調べます。このギターの場合、飛んだ木片を綺麗に組み立て接着し、その後ネックを接着します。塗装膜は飛んでありませんでしたが接着は綺麗に行なえました。
こちらは、ボディのクリーニングです。汚れや、タバコのヤニなどを落し、磨いていきます。今回は、ネックを折った際できた傷なども極力取り、綺麗に磨きました。
塗装に入ります。塗膜が比較的厚かったため、塗料を盛っていきます。ある程度整ってきたところで色を合わせます。 カラーが黒一色で、簡単そうに思われがちですが、海外の塗料と日本の塗料は同じ黒でもトーンが違い、黒色から作らないとダメなのです。暗い場所ではわかりませんが、日光や強い光線が当たるとすぐにわかってしまいます。また、トップコートもただのクリヤーではなく、焼けた感じを再現します。このような細かい部分を妥協してしまうと、結果として納得のいく仕上がりにはなりません。
弦を張って各部調整して完成になります.。今回の場合、接着面積が少なかったため補強が必要になりましたが、折った後の処理(木片をきちんと取っておいたこと等)が良かったためスムースに作業が進みました。また、ショートスケールでテンションもゆるいこともあり今後は心配なさそうです。