Final Update June 10, 1997

尺八に教わるの記

 尺八部に入部しておよそ1年位たった頃、後輩の林梓生

君が友人から尺八を譲り受けてきたといって願行寺に持っ

てきた。ひどく割れていて、音も出ない状態であったが、

おぼろげな「四郎」の焼印を信じて林君の飲み屋のつけ

(と本人は言っていた)と引き替えに持ち帰り、自分で修

理をして吹くことになった。3年間山口五郎師に習った後、

大阪に就職したが、四郎管には手こずっていた。「ロ」は

いいが「レ」が出ないのである。これは自分が製管者の吹

き方と違うためであると考え、何とか鳴らせられるように

なれば、それは会ったこともない四郎先生の吹き方に近づ

いているに違いないということで練習した。調子のいいと

きにレが出るようになってきたのは5年以上経ってからの

ことだったように思う。五郎師から離れている間、まさに

尺八に教わった、という気がしている。

水野 香盟
第20回東大尺八部OB会に際して(1996年6月記)

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