Final Update: July 26, 1997

平均律と純正律


はじめに


箏の調絃などで、音律の問題が生じる。音律は、2種類の音の 間の間隔を意味し、適切な音律で調絃されていないと 聞いていて気持ちが悪く、音楽としての価値が下がってしまう。 一般には演奏家の耳に頼って調絃されるが、チューナーを用いて 調絃される場合も多い。

チューナーは平均律で音程を判断するようになっているが 耳で聞いて心地いいのは周波数の比率が単純な整数比になっている 純正律である。そこで、以下ではチューナーを使っていかに 純正律の調絃に近づけるかについて検討する。


対数とは


対数には自然対数と常用対数がある。自然対数では logと書くかわりにlnと書いて自然対数と区別することが ある。以下では自然対数を使って説明することとする。
ex = y     (eのx乗はyに等しい)

ln y = x
と同じである、というのが自然対数の定義である。 eは自然対数の低と言われ、実際には e=2.718281828459 のような値である。

ex+y = ex ey
という指数関数の法則を対数で表すと、
lnA + lnB = lnAB
のようになり、積を和で置き換えられる便利な法則が 成り立つ。


オクターブは周波数で2倍


ln2=0.69314718 すなわち、ある周波数の対数値にln2を加えたものが オクターブ上の周波数の対数値である。 もちろん周波数ではちょうど2倍になっている。 ln2/12=0.0577622650=kh と置くと、 平均律の半音は、このkhを加えたものとなる。(対数値で) eのkh乗を計算すると、1.059463094359 となる。 これは、半音高い音の周波数は 1.059463 倍であること を表しており、 この数値を12回掛け合わせると2になる。

セント(cent)


セントというのは半音を100分割したもの。 ln2/12/100=0.00057762265=kと置く。 eのk乗=1.0005777895=kc、 つまり、1セントは周波数が0.05777895%異なることに相当する。 周波数比の対数値をkで割ればセントになる。

平調子の一と二(DとG)


完全4度は、半音が5つあるので、 500セント、 それに対して、周波数比4/3の対数値は ln(4/3)=0.2876820725 これをkで割ると498.0449995  2セントの狂い、ということになる。 二を2セント低くとれば、純正律となり、正しい和音が得られる。 なお、440Hzでの周波数で言うと、 0.5Hz低くとることにあたる。(正確には0.508Hz)

平調子の一と三(DとA)


平調子の一と三は完全五度である。完全五度は、 半音を7回掛け合わせたものだから、 1.498307076877 であるが、純正律としては これが1.5である。 ln1.5×k=701.9550 平均律で700セント。その違いは、やはり 1.955セント、約2セントである。 三は約2セント高くとるといいことがわかる。

2セントは440ヘルツにたいして 0.508ヘルツ、大ざっぱに言って約0.5ヘルツ高くとらなければ ならない 4度と5度が同じになるのはあたりまえ。 なぜなら、5度プラス4度がオクターブなのだから。


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