世の中が便利になって
      一番困っているのが 実は人間なんです。   (浅田正作)   


恥ずかしながら私は一昨年の東京電力福島原子力発電所の事故以前に、

国内に原子力発電所が何ヶ所、原子炉が何基あるののか知りませんでした。(17箇所、54基)


 そして日本の総電力の26%が原子力発電によって支えられていたということも。

宇宙船から地球を見ると、夜の日本列島は明々としていたとの報告があります。

電力によって私たちは昼も夜も便利で快適な生活を送ることが出来ているのです。

第二次大戦後、日本は豊かな国造りを目指して、驚異の復興を遂げて、世界の経済大国の

仲間入りを果たしました。しかし、その過程では公害が各地で発生し、多くの人々が亡くなり

今も苦しんでいる人が沢山います。

 
 私は小学生時代、生活用水は井戸水をツルベでくみ上げ、バケツで運びました。

上水道が敷設された時、「ひねるとシャー」といったことを今でもはっきりと覚えています。

そして三種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)が普及し快適な生活が送れるようになりました。

それでも満足できずさらに生活の向上を目指して「バブル」時代に向かって突つ走って

いきました。」「バブル」とは「泡」という意味ですから中味がなく、実態のないそらごと、

たわごと、まことでないものを手にしようと躍起になっていました。


 その当時、仏教界、教団内において警鐘をならすのは一部の人しかおらず、

その声もかき消されがちでした。逆に時流に乗り遅れないように、それいけドンドンと

アクセルを踏み続け、ブレーキを踏むことを忘れていました。

仏教には「少欲知足」とか「吾、唯だ足るを知る」という教えがあります。

しかし、単なる言葉のもてあそびに終わって、実生活の指針とはなっていなかったのです。


 アフリカ人の女性で初めてノーベル平和賞を受賞されたワンガリ・マータイさんが

提唱した「もったいない」の生き方に改めて考えさせられました。また、先年來日された、

プータン国王夫妻の飾りのない素朴な言動にも多くの国民が感銘を受けました。

これまでの日本の幸福度はGNP(国民総生産)が基準でした。

プータンはGNH(国民総幸福量)だと知りました。電力や水が不足するから節約するのでなく

(もちろんそのことは大切です)、たとえ十分すぎる余裕があったとしても、そのもの自体を


 大切に受け止める心を取り戻したいと思います。それは食べ物や着るものにたいしても

同様です。「食事の言葉」を日常生活で唱和するだけでなく(この実践さえなかなか難しいことです)
合掌・お念仏の中で感謝、お礼の心が満ち溢れた
食卓にしたいものです。
今こそ、欲望の生活からつつしみへ、お念仏のよろこびを
実践へ展開したいものです。