エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
監督:オリヴィエ・ダアン
出演:マリオン・コティヤール 、ジェラール・ドパルデュー
時間:2h20
郊外のシネコンで見てきました。
以前、テレビで美輪明宏が、「日本で歌われている『愛の賛歌』の歌詞は日本風の作り物で、本当の歌詞はエディット・ピアフの生涯と同様にものすごく強烈な愛の歌です。愛する人のためなら、自分はどうなってもいい、そういう歌で、『私を抱きしめて…』みたいな感じじゃないんです」的なことを言っているのを耳にしました。
フランス語がわからないので、歌詞の内容に関してはどうだかわかりませんが、三輪明宏がいうところの「エディット・ピアフのすごい人生」というものが本作では遺憾なく表現されています。
ヴェルビルの貧民外のようなところで生まれ、子供時代から大貧民な生活をし、母親に捨てられた後は父親の母(ピアフから見ると祖母)が経営する売春宿で娼婦に囲まれながら成長していきます(でも、そこの娼婦の人たちはすごく親切でいい人たちなんですけどね…)。大人になったとも、薬と酒におぼれながら安酒場で歌って日銭を稼ぐ生活。しかも、歌が売れて超有名人になった後も、酒びたり薬漬けの生活は変わりません。そんななかで、愛する人が死に、体を壊し、ステージで倒れ、一人、死んでいく。
本当に、「歌」以外のところでは全く「幸せ」と縁がないんですよ。
唯一、「幸せ」といえたボクサーのマルセルとの恋も、飛行機事故でマルセルが死ぬという最悪の終わり方をしますからね。
でも、そんな不幸真っ只中でも、歌うことだけは続けるんですよ。
そりゃ、歌に説得力がありますよね。
背負っている人生が半端じゃないですから。
本当のエディット・ピアフの人生や人格と、この映画が描いているピアフの人生や人格がどれほど整合するのかわかりませんが、仮に、この映画が描いているような人生をピアフが送り、ピアフがこの映画が描いているような人間だったとすると、この人、生涯にわたって、それほど人に愛されていなかったんじゃないかと思うんです。
父親と母親は問題外ですし、仕事仲間との関係も、なんか、「利益でつながってる」感じで微妙です。
それに、ピアフ自身も他人を拒絶するというか、いつも回りに人がいるんですけど、その人たちにおびえていてそれを拒絶しながら生きているというか、そんな振る舞いです。
自分からも拒絶するし、相手からも拒絶されるし、近寄ってくるやつは金目当てだしといった感じで、ピアフが本当に人の優しさに触れたのは、幼い頃は「売春宿」、大人になってからは「マルセル」、この二つだけだったんじゃないでしょうか。
そんな状況ですから、そりゃ、一つ一つの愛に対して没入してきますよね。
「愛がいっぱい」なんて、とんでもない話です。
人生でほんの少ししか出合えない愛に没入して生きていく。
そんな感じの人生です。
ただ、でも、正直、映画に描かれているピアフって「そばにいて欲しくない」感じの人なんですよね。
自分のそばにこんな人がいたら、間違いなくイヤです。
癇癪持ち出し、酒びたりだし、ヤク中だし……
結局、そういう運命の人だったんでしょうね。
生涯、愛に恵まれない。
そうなる宿命だったんでしょう。
ここ数年、アメリカでは、この手の伝記映画が数多く作られていますが(要は「ネタ切れ」なんでしょうけど…)、本作は、そんな伝記映画の中でもかなりいい出来だと思います。
DVDを買うべきか買わざるべきかと相談されたら悩むところですが、映画館で見る分には十分すぎるほどお勧めできる作品です。