おいしいコーヒーの真実
監督:マーク・フランシス、ニック・フランシス
時間:1h18
近所のミニシアターでみてきました。
予告編動画
ストーリー
世界中でもっとも消費されている飲み物、コーヒー。ヨーロッパやアメリカをはじめとした先進国では、スターバックスなどのコーヒーショップで一杯あたりおよそ300円〜500円ほどでコーヒーが販売されている。しかし、そのコーヒー一杯の値段の内、実際に、生産地でコーヒーを作っている人々の取り分はいくらなのか?コーヒー豆の世界的な生産地であるエチオピアの現状と先進諸国の日常生活を往復することで見えてくる、コーヒーを取り巻く真実とはいったい何なのか…
大まかに書くと大体こんな感じのストーリーです。
何かの本で読んだのか、それとも、何らかのドキュメンタリー番組で知ったのか、情報の出所が定かではないんですが、以前、「チョコレートの原料であるカカオ豆を生産している国の子供達はチョコレートを食べたことがない」なんていうことが話題になりましたよね。
そういった、前例がありますから、本作が伝えようとしている内容もおおよそ見当がつくと思います。
本作が主に取り上げている国はエチオピアですが、やはり、原産地で実際にコーヒー豆を作っている農家の方々の暮らしっていうのは、かなり悲惨なものがあるようです。
子供達の間では両親の経済的な困窮から生じる深刻な栄養不足が蔓延し、大人たちの間では「金になる」という理由でエチオピア以外の諸外国では生産・販売・使用がいずれも禁止されている麻薬まがいの植物生産が大々的におこなわれる。
そんな原産地の悲惨な生活状況と、人々がコーヒーの入った紙コップを片手に町中を闊歩する先進国の情景とが交互に映し出されることで、この世界の現状というものがコーヒーという側面から明確に浮かび上がってきます。
この手の問題は何か一つのことをどうにかすればそれで解決できるといった一面的な問題ではないと思いますし、そもそも、この手の問題に「解決」という状態が存在するのかという疑問もありますが、それでも尚且つ、やっぱり、実際に、こういう映画を見せられると少し考えさせられるものはありますよね。
コーヒーという切り口も斬新でしたし、78分という上映時間も中弛みがなくてすごくよかったと思います。
そんなわけで、全体的にみれば、非常に良質なドキュメンタリーとみなして問題ないんでしょうが、ただ、個人的には、もうちょっと踏み込んで欲しかったかなぁという不完全燃焼なところはありますね。
さっきも書きましたが、この映画の基本的な構造は、エチオピアで実際にコーヒー豆を作っている人たちの生活状況と、先進諸国の日常生活を交互に映し出すというものです。
それはそれで、みている人に何らかの心理的な葛藤を呼び起こすには適した手法なんでしょうが、実際に、このコーヒーにまつわる問題を俯瞰した時に、本当に掘り下げるべきなのは、生産地である貧しい国と消費地である先進諸国という生産と消費の両極ではなく、生産地と消費地を結びつけるところに存在している様々な企業のはずなんです。
ところが、このドキュメンタリー映画は肝心の生産地と消費地の真ん中にある部分を全く映し出さないんですね。
確かに、映画の後半部分で、WTO(世界貿易機関)の会議が先進諸国の思惑通りに進んでいてアフリカ諸国などの貧しい国々の意見が全く通らないといった情報が、実際にWTOの会議がおこなわれている会場(もちろん、会議場内には入れませんよ)からの映像も交えて報告されていましたが、そこだけではなく、コーヒーにまつわる多くの民間企業の内実にも踏み込んで欲しかったですよね。
実際、ドキュメンタリー映画って、大きく分けると以下の二種類、すなわち、
1、記録系ドキュメンタリー映画(自然現象や動物の記録、ある特定の人物の生涯を伝記的に辿ったもの、ミュージシャンが行うコンサートツアーに密着したものや、アーティストの創作活動を追ったもの、など)
2、問題提起系ドキュメンタリー映画(社会問題、環境問題、人権問題などなど様々な問題に関して何らかの問題を提起し、それに対する考察材料を提供するもの)
に分類できるんですが、本作、『おいしいコーヒーの真実』は明らかに2の「問題提起系ドキュメンタリー映画」二分類されます。
それゆえ、この映画は、コーヒーという観点から何らかの問題点を提起し、その問題を考察するに当たって必要となる情報を可能な限りたくさん提供すべきなんです。
ところが、本作は、生産地と消費地の対比という仕方で問題の提起には成功しているんですが、その問題に着いて考察する際に必要となる情報の提供が不十分なんですね。
この映画の最後に、スターバックスをはじめとしたコーヒー関連企業が本作を制作するに当たっての取材申し込みを拒否したという趣旨のテロップが表示されます。
確かに、それはそれで思わせぶりな雰囲気作りとしては成功しているんですが、ドキュメンタリー映画であるいじょう、やはり、そこの部分にもうちょっと踏み込んで、見る側に情報を提供してもらいたかったですね。
その点だけがちょっと残念でした。