陸に上がった軍艦

監督:山本保博
原作・脚本・証言:新藤兼人
出演:蟹江一平、滝藤賢一、三浦影虎、鈴木雄一郎、友松タケホ、藤田正則
時間:1h35

 近所のミニシアターで見てきました。
 本作は、現役最高齢である映画監督、新藤兼人が自らの戦争体験を語った証言VTRと、その証言を基に作られた再現映像で作られているプチドキュメンタリー的な作りの反戦映画です。
 私が普段通っているような地方のミニシアターでは、通常、この手の作品はあんまり客が入らないのですが、今回はかなり客が入っていました。
 何か、目立った宣伝をやったのでしょうか?
 取り立てて、予告編を大量に流していたとかそういったことは無かったと思うんですが、なぜなんでしょう?
 映画にお客さんがたくさん入ってくれるのはいいことだと思いますが、あまり入らなそうな映画に突然ポンと入ると、普段から通っている常連客としてはちょっとびっくりします。
 さて、映画の内容についてなんですが、なんか、ちょっと微妙です。
 ていうか、内容的にはすごくおもしろいですし、映画館で上映するだけの価値がある作品だと思うんですが、映像の作りというか雰囲気というか、そこらへんがなんだかNHKの深夜でやっているドキュメンタリーみたいで、この手の雰囲気の作品が映画館のスクリーンで上映されていると不思議な違和感があります。
 映画って、やっぱり、どんな映画でも、映画に特有の独特の雰囲気があるじゃないですか。
 本作にはそれが無いんです。
 もちろん、「映画って何?」みたいな話になると、私もそれに対する答えは持っていませんが、本作にはその映画っぽい雰囲気が全く無くて、完全にテレビ番組的な雰囲気です。
 ですから、映画を見ている最中も、映画を見終わったあとも、「映画」特有の満足感的なものは全くありません。
 しかし、本作、「映画」という意味での満足感が無いかわりに、ひとつの作品の魅力はかなりのものです。
 反戦映画って、どういう作りであるにしろ、なんとなく湿っぽい雰囲気になるじゃないですか。
 でも、本作は、戦争という負の営みが持っている「滑稽」な部分がクローズアップされているので、見ている最中に客席から笑いが漏れるほどで、湿っぽさなんか微塵もありません。
 ていうか、本作を見ていると、戦争って本当に「滑稽」なものの積み重ねでできているように感じます。
 いや、それも、正確じゃないですね。
 なんていうのか、規律とか懲罰とか、そういったシリアスの頂点にあるような事柄を、軍隊という組織内で徹底的に厳密に行うと、ものすごく「滑稽」になるという現実が、ものすごく冷静な目で描かれているんです。
 よく、体育会系の雰囲気がものすごく強い部活なんかで、部内にだけ残る笑える風習みたいのがたくさんあたりしますけど、本作で描かれる海軍の内実はその手の笑える風習の極限のような状況です。
 当時の海軍は、こんなことをやりながらアメリカと戦っていたのかと思うと、「そりゃ負けるわ…」とつくづく思います。
 もちろん、そう思う反面、「こんなことをやっていたのに、当時の日本がよくぞあそこまで勝ち進んだなぁ」と感心する部分もあります。
 新藤兼人氏の語り口自体が若干とぼけているという点もあるんですが、その点を差し引いても当時の海軍の状況は極めて「滑稽」です。
 戦争っていうと、どうしても悲惨な戦場とか残された家族とかそういった悲劇的な部分だけがクローズアップされがちですが、戦地に行くことがなかった「弱兵」という立場で描かれた「滑稽なもの」としての戦争はめったに見ることができません。
 そういった意味では、本作は非常に有意義な作品だと思います。

Official Site

Home