ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた〜
監督:エイドリアン・シェリー
出演:ケリー・ラッセル、ネイサン・フィリオン、シェリル・ハインズ、エイドリアン・シェリー、ジェレミー・シスト
時間:1h48

 近所のミニシアターでみてきました。
 いきなりですけど、パイって、日本人にとってはあんまりなじみのない食べ物ですよね。
 「パイ」って言われてパッと思いつくものっていったらアップルパイですけど、それ以外は、う〜ん…て感じです。
 チェリー☆パイっていうお笑いコンビがいましたけど、「チェリーパイ」の現物は食べたことないですし、他の種類のパイについても同じです。
 キッシュなんかもパイの種類らしいんですけど、その「キッシュ」も名前は知ってますけど食べたことはないですからね。
 ですから、「パイ」っていわれてもアップルパイの延長ぐらいのイメージしかないんですけど、この映画を見ていると、アメリカ人にとっては「パイ」ってかなり生活に浸透した食べ物みたいですね。
 パイ皿にパイ生地をしいて、そこに具(「具」ていう言い方でいいのかわかんないですけど…)を入れてオーブンで焼く。
 この形態をとってさえいれば、ありとあらゆる料理は具の中身にかかわらず「パイ」って呼ばれているみたいです。
 そんなパイ作りに天才的な才能を持つ女性ジェンナが本作の主人公です。
 食べた人がみんな幸せになれるおいしいパイを焼けるのに、ろくでもない夫と結婚してしまったばかりに自分自身は不幸のどん底にあるジェンナですが、夫と別れるべく準備をしている最中に妊娠が発覚。
 不幸の真っ只中で揺れ動くジェンナは、産婦人科でであった若いイケメン医師のポマター先生と不倫関係になってしまうのですが…
 大まかに書くとそんな感じのストーリーなんですが、この映画、なかなかいいですよ。
 一見するとすごく軽くて薄っぺらい感じのする映画なんですが、この軽さと薄っぺらさって、「素」の軽さや薄っぺらさじゃなくて、「狙い」の軽さと薄っぺらさなんですよ。
 「狙い」っていう言葉を言い換えると「監督の色が濃い」っていうことなんですが、この映画が持っている雰囲気って、アメリカ発信で配給される量産型の映画とは明らかに一線をかくした強い色があるんです。
 演者も登場人物のキャラクター設定も台詞もストーリー展開も、全体的にチープな雰囲気を漂わせているんですが、これって監督の「色」なんですよ。
 ネットの評判をチラッと見てみたんですけど、この軽さと薄っぺらさを「監督の力の無さ」みたいに考えていらっしゃる方がけっこういるみたいです。
 もちろん、感想は人によって違いますし、そもそも「感想」っていうものは「間違っている」とか「正しい」っていう尺度で測れるものではないんですけど、私が抱いた感想はそれとは全く逆ですね。
 むしろ、この監督、かなり力のある人だと思いますよ。
 アメリカ映画がもっている雰囲気にドンドン個体差がなくなっている、いいかえれば、どの作品を観ても似たような雰囲気になっているっていうことは、皆さんも感じていることだと思うんですが、そんな状況にあって、これぐらい独自のチープな色合いが出せるっていうのは、かなり期待できる才能だと思うんです。
 まぁ、もちろん、これぐらい規模の小さい作品だったからこそ自分のカラーを強く出せたっていうこともあるとも思うんですが、こういう人にこそ、制作費のある大き目の作品を作ってもらいたいですね。
 そんなことを思いながら本作のエンドロールを見ていたんですが、エンドロールの一番最後に「エイドリアン・シェリーに捧げる」っていう文字が出たので、「えっ?」と思ってネットでしらべてみたら、本作の監督、脚本、そして主人公の同僚役で出演もしているエイドリアン・シェリーはもうすでに故人になっていました。
 なんでも、騒音トラブルで階下に住む19歳の男性に殺害されたそうです。
 惜しい人材を失いましたね。

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