薔薇の名前
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ショーン・コネリー、クリスチャン・スレーター、F・マーレイ・エイブラハム
時間:2h11
ウンベルト・エーコの原作のせいなのか、この映画のことを「難解だ」という人にしばしば出会うことがあります。
確かに、舞台が西洋中世の修道院であったり、凶器と動機がともにアリストテレスの失われた著作『詩学』β巻に関するものだったり、西洋中世におけるアリストテレスの影響などに関する知識があればより深く楽しめるのかもしれませんが、映画の基本的な骨格を考えた場合、これはミステリーですから、犯人がいて、動機があって、凶器が合って、犠牲者がいて、それを操作する探偵役(これが主役のショーン・コネリーですね)がいるっていう構造は火曜サスペンスと一緒です。
ですから、それほど深刻に考えずに、独特の雰囲気に浸りながら一つのサスペンス映画と思ってみれば、この時代の風俗や思想史的な背景に知識が全くなくても十分楽しめると思います。
ただ、そうはいっても、やはり雰囲気だけはものすごく独特ですから、それになじめないという人はやはりなじめないかもしれません。
修道院のスクリプトリウム(これって、日本語に直すと何なんでしょう?「写経塔」とか「本写し場」とか、もしくは何でしょう、「写字塔」とか、そういうネーミングが適切なんですかね?)で、一人の人物が殺されるわけですが、その事件の真相をめぐって、ショーン・コネリー演じる修道士ウィリアムとその助手的存在の駆け出し修道士アドンが推理を展開します。
このサスペンス映画の最大の見所は、やはり、殺人の「動機」と「凶器」の部分なんだと重います。
教義と権力の保持を意図して、協会の権力の源である教義の部分を打ち砕いてしまうほどの破壊力を秘めたアリストテレスの著作を禁書として塔の奥深くに封印した教会側と、その教会に属しながらも「知識欲」の誘惑に耐えられずに禁じられた著作に手を伸ばす修道士達。そんな知識欲に突き動かされる修道士達に、とんでもない凶器の魔の手が襲い掛かります。
どことなくホモっぽい香りが立ち込める修道院の禁欲生活の中で、恐らく唯一許容される欲求が「知識欲」なんだと思いますが、そんな人間の純粋な欲と、その「知識欲」にすら制限をかけようとする、もしくはかけなければならない権力との対立構造、これがやはりこの映画の見所だと思いますね。
レンタルビデオ屋とかでも、あんまり置いてなかったりしますし、妙に敷居の高い雰囲気のある作品かもしれませんが、ちょっと変態チックな香り漂う非日常空間の雰囲気に身を任せてみてみれば、思いのほか楽しめる作品だと思います。
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