ベルリン・天使の詩
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ブルーノ・ガンツ, ソルヴェイグ・ドマルタン他
時間:2h08
近所にある美術館の地下がシアターになっていて、そこでは時折、古い作品をスクリーン上映してくれるんですが、今回、この美術館が近所のミニシアターと共同で『ベルリン天使の詩』を公開してくれました。
この作品とは、近所にあるレンタルビデオ屋でVHSを借りたのがきっかけで出会ったんですけど、この作品との出会いを機会にヴェンダースの世界観にドップリとはまり、その後、アマゾンでDVDを買い漁ることになりました。
で、アマゾンで買ったDVDを自宅で何度か繰り返してみていたのですが、やっぱりスクリーンで見ると違いますね。
DVDでは、ベルリンの町にたたずむ像の横に一人ぽつんとたたずんでいる天使の視点が、いまいちよく理解できなかったんですが、スクリーンで見て初めて天使の視点ていうのがぐっとリアルに理解できました。
やっぱり映画はスクリーンで見てこそ真価が発揮できますね。
ご存知の方も多いと思いますけど、本作『ベルリン天使の詩』は『攻殻機動隊』の中でもその世界観がオマージュ的に採用されています。
アニメという媒体でその世界観が採用可能だという点からもわかると思いますが、この『ベルリン天使の詩』はヴェンダースの作品群の中では異色なほどファンタジー的な色合いが強い作品です。
一番わかりやすいのは『ニックスムービー 水上の稲妻』だと思うんですが、ヴェンダースってドキュメンタリーを作るにしろ、フィクションを作るにしろ、どちらの作品でもドキュメンタリーとフィクションのあいだぐらいの独特な立ち居地で、カメラの前で起こる出来事をものすごく静かな視線で見つめているって感じなんですよね。
ところが、この『ベルリン天使の詩』は、ドキュメンタリーな色がかなり薄れてファンタジーの要素が前面に出ています。
なんていうか、他の作品に比べて圧倒的にロマンチックなんですよね。
確かに、作品のところどころで、ヴェンダースの故郷であるドイツが経験した戦争の映像が挿入されたりもするんですが、その現実の映像さえも、作品全体を構成する一つのピースとしてロマンティックな雰囲気をより強く印象付ける働きをしています。
作品の前半部分は本作の主人公である天使のダミエルとその友人で同じく天使のカシエルが、ベルリンの街中を漂いながらそこに生きる人々の心の声を静かに聴いて回ります。
この場面で、初めて気づかされたんですが、人間の心の声が一番強く響いている場所って図書館なんですよね。
本作では、すごく大きな図書館にたくさんの天使達が集まるシーンがあるんですが、そこでは机を前にたくさんの人の心の声がこだましています。
そんな、たくさんの人たちの心の声を聞いているうちに、天使ダミエルは霊的な存在である自分のあり方を捨てて、有限で肉体を持った存在になりたいという考えを抱くようになります。
暖かさ、冷たさ、味、匂い、時間、限界、そんなことを文字通り肌で感じながら生きていく存在、そんな存在になりたいといつしか思うようになっていきます。
そして、ある日、ダミエルはサーカスで働く人間の女性に恋をします。
天使のみでありながら、有限の存在にあこがれ、人間に恋をしてしまったことに悩むダミエル。
そんなところに、ふらっと、『刑事コロンボ』で有名なピーター・フォークが現れます。
ピーターは人間には見えないはずの天使ダミエルに、当たり前のように語りかけ、こちらの世界もいいものだと諭し、何かの約束を交わすように握手を求めます。
このピーターもかつての天使、ダミエルと同じように天使でありながら有限な人間にあこがれ、自ら天使としての立場を捨てて人間になった存在でした。
そんなピーターに導かれるようにして、ダミエルもまた天使としての行き方を捨てて人間として生きる道を選びます。
映画の冒頭から最期まで、アフォリズムをふんだんに散りばめながら一つの作品がつむぎ上げられていきます。
その作風にはあたかも叙事詩のような風情があります。
言葉ではなく、映像という手段を使って詩を書いてみた。
そんな作品だと思います。
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