ブラインドサイト 小さな登山者たち
監督:ルーシー・ウォーカー
出演:サブリエ・テンバーケン、エリック・ヴァイエンマイヤー
時間:1h44

 近所のミニシアターで見てきました。
 この『ブラインドサイト』というドキュメンタリーは、簡単に書くと、盲目の子供達がヒマラヤ登山に挑戦するという内容なんですが、その内容と関連して、私が観に行った当日、このミニシアターでは「バリアフリー上映」と称して盲目の人たちに副音声で映画を楽しんでもらうという試みを行っていました。
 ラジオのFM放送を使って副音声を流し、盲目の人たちはラジオから流れるその副音声を聞きながら映画を観る(?)というスタイルだったんですが、ミニシアター側も初めての試みだったようで大分てんやわんやしている様子が見て取れました。
 ただ、映画が終わった後、お客さんの大半は満足そうな表情をしていたので、イベントとしてはおおむね成功と見てもいいんじゃないでしょうか…
 帰るときに、ラジオで副音声を聞いていたお客さんの一人が、「ちょっと映画の音が大きすぎて、副音声が聞き取りづらかった」といったことをミニシアター関係者に漏らしていましたが、それも批判とか文句といった類の強い口調ではなく、ちょっとした意見というか、感想に近い感じの穏やかなものだったので、まぁ、平穏無事に終わったと観て間違いないでしょう。
 副音声ってテレビにもありますけど、あれを使って映像媒体を楽しむっていうことは、聴覚的に獲得された刺激を一旦脳内で視覚的な像に置き換えて(視覚的な像を想像して)楽しむっていうことなんでしょうか?
 要は、耳で聴く読書みたいなもんなんでしょうかね?いまいち、感覚がつかめません…
 でも、この手の試みって、あんまり行われていないようなので、視覚障害と関係のない普通の映画でももっと積極的に行われていけばいいと思いますね。
 映画館にしても映画を作る側にしても、客層が広がるわけですから決して損はしないと思うんですけどね。
 さて、映画の内容に関してですが、簡潔にまとめてしまえば、「盲目の子供達がヒマラヤ登山に挑戦する」というものすごく簡潔な内容なんですが、この挑戦する子供達の置かれている状況がちょっと普通じゃないんですよね。
 挑戦するのはチベットの子供達なんですが、チベットには「盲目の人は悪魔に取り付かれている」的な因習があるらしく、登場する子供達は町中の人からものすごく粗末に扱われています。
 盲目の人が町を歩いていると、ごく普通の人のよさそうなオバサンが、すれ違いざまに「父親の死体でも食ってな!!!!!!!」と吐き捨てるように言い残して去っていきます。
 これって、ものすごい言葉だと思いません…?
 よくアメリカ映画なんかを観ていると「Mother Fuc○er!!!!!!!!!!!!!!!」なんて言葉が使われたりしますけど、母親とセックスどころか、「父親の死体の肉を食え」ですからね。
 恐ろしい話ですよ。
 で、もちろん、そんな扱いですから教育なんかまともに受けてないんですよね。
 そんな劣悪な環境のなかで一人のドイツ人女性(この人も盲目)が、視覚障害者用の学校を作ります。そこでは盲目の子供達に点字や英語などを教えるなどして、子供達の学力向上や社会復帰に対する試みがあれこれとなされています。そして、そんな盲学校で教育を受けている子供達が本作の主人公です。
 これまで劣悪な扱いを受けてきた子供達が社会に復帰する際の自信をつけさせようと、同じく盲目でありながらエベレスト登山に成功したエリックという人物を招いて、子供達をこのエリックと共にヒマラヤ登山に挑戦させます。
 当然、エリックだけではどうしようもないので、登山のプロフェッショナルたちをスタッフとして向かえ、訓練をつみ、エベレストの隣にある7000メートル級の山に挑戦します。
 最初のうちは元気に上っていく子供達ですが、途中から高山病やら、疲労やら様々な問題が出てきます。
 生徒達の安全を考えて下山を主張するメンバー、ここで下山したらやらなかったもおなじと主張してこのまま上ることを提案するメンバー。
 パーティーの中でも意見が食い違うなか、子供達の山登りは続きます。
 この登山が最終的にどういう結末を迎えるかは敢えて言いません(死者が出たりとか、そういうことはないですよ)。
 でも、そこにあるのは間違いなく、一つの幸せな結末だったと思います。
 ドキュメンタリー映画は良作と駄作の差がはげしいですが、本作は間違いなく、良作の部類に入る作品でしょう。

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