ヘンダーソン夫人の贈り物
監督:ティーヴン・フリアーズ
出演:ジュディ・デンチ、ボブ・ホスキンス、クリストファー・ゲスト、ケリー・ライリー
時間:1h43

 近所のミニシアターで見てきました。
 公開初日だったので、思っていた以上にお客さんも入ってました。
 で、映画の内容ですが、第二次大戦中のロンドンを生き抜いた女達の物語です。
 戦時下の女の生き様というと、以前、郊外のシネコンで『トリコロールに燃えて』という作品を見たことがあるのですが、この『トリコロールに燃えて』がものすごくシリアスなタッチの作風だったのと比べて、本作『ヘンダーソン夫人の贈り物』は、コミカルな要素もふんだんに盛り込んだ軽快な作風になっています。
 お金をもてあました未亡人のヘンダーソン夫人が劇場を購入して、支配人として雇ったヴァンダムと一緒に、ロンドン発の女性のヌードを見せる公演を行うというのがストーリーの本線です。
 映画の序盤は、この「ヌード公演」という点に対する検閲官とのやり取りがメインなのですが、映画の中盤から後半にかけて、迫り来る戦火の様子が描かれ始めた当たりからは、ただの一娯楽にすぎなかったはずのこの「ヌード公演」が、戦地に向かう兵士達のあいだで大きな心のよりどころになっていく様子が描かれています。
 女の身体も見たことがないまま若くして戦地に送り込まれて戦死する兵士達に、せめて、一目本物の女の身体を見せてやりたい。
 劇場のオーナーであるヘンダーソン夫人と、その劇場で働く女達の間に、いつしか「裸を見せる」ということに対する「誇り」と「義務感」が芽生えていきます。
 「一目、本物の女の身体を見せてやりたい」というのは文字にするとなんだかおかしな雰囲気のする文章ですが、実際、日本でも戦時下では性的な事柄に関して「せめて〜〜」みたいな状況ってありましたよね。
 一番、有名なのは、あれですよ、あの、特攻隊員が好きな女性の下の毛をお守りに持っていたとか、売春婦の人たちが兵隊さんを優先的に相手をしてあげたとか、色々ありますよね。
 戦時下において、男性に積極的に性的な行為を提供する女性に対して、結構厳しい意見を言う人も中にはいると思うんですが、いざ、戦時下という状況になったら、そういう女の人たちには何もいえませんよね。
 実際、この映画の中でも、劇場で自分の裸を見せてることを恥ずかしがっていた女性達の間に、次第に、強い「誇り」が芽生えて、その誇りによって、個々の女性たちがそれぞれに一人の女性として輝いていくんですが、戦時下で働く性産業の女性って、男目線で見たら、やっぱりある種の神々しさを感じますよね。
 全体で100分ほどのまとまりのよい作品ですし、ものすごくテンポがいいので、ある程度重いテーマを扱っているにもかかわらず、見終わった後の感覚はすごくさわやかで、映画館を出たときに少しだけ背筋を伸ばしたくなる映画ですね。
 良作です。

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