胡同の理髪師
監督:ハスチョロー
出演:チン・クイ、チャン・ヤオシン、ワン・ホンタオ、ワン・シャン、マ・ジンロン
時間:1h45
近所のミニシアターで観てきました。
本作は、年老いた理髪師の姿を通じて再開発真っ只中の北京の現状を描いている作品なんですが、最近の中国映画ってこの手の作品が多いですよね。
『長江哀歌』もそうですし、数年前に観たアニメ映画『マクダル、パイナップルパン王子』もそうでした。
『美味しんぼ』の作者がしばしば自作のなかで中国の素朴さみたいなものをものすごく強く打ち出した作品を書きますよね。私はそっち方面の専門家ではないので、実際の中国がどういうものなのかよくわかりませんが、中国人自身もこの北京の再開発によって、『美味しんぼ』の作者が描こうとしているような「素朴さ」や「あたたかさ」のようなものが失われているということを強く自覚しているのかもしれません。
実際、映画の中でも、胡同(フートン)というこれから開発される古い地区の人々の生き様がとても穏やかで優しく描かれており、それとは対照的に、すでに開発されて高層ビルやマンションが林立している地域に生きている人たちの姿はものすごく冷淡な筆致で描かれています。
どこの発展途上国もそうだと思いますが、中国も今、先進国が歩んできた道をものすごい勢いでがむしゃらにひた走ってるじゃないですか。
そういう情報を見聞きすると、中国の国民が近代化(この「近代化」っていう言葉もなんとなく古臭いですね…)、もしくは、「追いつけ追い抜け先進国!!」みたいな方向に向かって強い志向性を持っていることは事実だと思うんです。
ただ、そういう志向性を持ちながらも、どこかに、変わっていく町並みや、町並みの変化に伴って変わっていくその町に生きている人の内面というものにある種の「戸惑い」に似た感情を持っているのかもしれませんね。
本作に出演している俳優さんたちは、主役の理髪師を演じている人も含めてほとんどが実際に胡同の町に暮らす素人さんだそうです。
幸か不幸か中国語が分からないので、演技の良し悪しなどは全く気になりませんでしたが、全体的なトーンに、この手の「古きよき時代」を描いた作品に特有の「押しつけがましさ」を全く感じなかったので、あえてプロの俳優を最小限にとどめるという本作のやり方はおおむね成功していると思いますね。
個人的には、映画のラスト部分を妙にダラダラと引き延ばした感じがしたのがちょっと気になりましたが、全体的にみればなかなかの良作だと思います。