幻影師アイゼンハイム

監督:ニール・バーガー
出演:エドワード・ノートン、ポール・ジアマッティ、ジェシカ・ビール、ルーファス・シーウェル、エドワード・マーサン
時間:1h49

 近所のミニシアターでみてきました。
 ここから先の部分で、本作の感想を書くわけですが、今回、過去最大のネタバレを行いますので本作をまだご覧になっていない方はブラウザの「戻る」を押してTOPページに戻ることをお勧めいたします。




 さて、本作の感想ですが、先ず、全体の感想として「非常によかった!!」です。
 本作の予告編に「『ショーシャンクの空に』を思わせる爽快なラスト!!」という宣伝文句がありましたが、この宣伝文句はズバリですね。
 確かに、『ショーシャンクの空に』を髣髴とさせるものすごい爽快感のあるラストです。

 幼い頃、互いに愛し合っていた主人公アイゼンハイムと公爵家の令嬢ソフィは、身分の違いを理由に引き離されてしまいます。しかし、十数年後、アイゼンハイムとソフィは、劇場で大ヒットを飛ばす幻影師とハプスブルク帝国皇太子の婚約者として再びめぐり合うことになります。幼い頃の恋心が再燃して、一目出会った瞬間に恋に落ちた二人は、ソフィの婚約者である皇太子の束縛から逃れて二人で暮らそうとしますが、嫉妬深い皇太子は二人の計画を知って逆上し、ソフィをみずからの剣で刺し殺してしまいます。最愛の人を奪われて怒りに震えるアイゼンハイムは、得意の幻術を使ってスキャンダルを引き起こしながら、皇太子の側近である警部を巧妙に利用しながら皇太子の帝位のっとり計画をすっぱ抜き、皇太子を自殺に追い込みます。

 これがおおよそのストーリーなんですが、このストーリーの影に巧妙なトリックが仕掛けられているんですよね。
 ここからネタバレ大会になりますが、皇太子に殺されていたと思われていたこのソフィ、実は生きてるんですね。
 「全てを欺いても手に入れたいもの、それは君…」
 映画全体のキャッチフレーズとして使われているこの一節が象徴しているように、アイゼンハイムとソフィは二人で綿密に計画を練り、意図的に仮死状態を作り上げつつ、皇太子の剣に埋め込まれている宝石やソフィのペンダントを皇太子によるソフィ殺害の物的証拠としてでっちあげながら、最終的に皇太子の手から逃げ切るんですね。
 すごく巧妙につくりこまれている映画なので、ここで私ごときがチョロッと説明しただけだといまいちストーリーの全体像がつかみにくいかもしれませんが、先に書いた表ストーリーの中に、巧妙に裏ストーリーのヒントがちりばめられているんです。
 で、この簡単なストーリー描写だけでも気づく人は気づくと思うんですが、本作でアイゼンハイムの敵役として登場している皇太子、この人、結局のところは、別に、ソフィを殺したわけでもなければハプスブルク帝国という国に対しても取り立てて悪いことをしたわけじゃないんですよね。
 確かに、女関係の悪い噂は絶えないですし、自分の父親である現ハプスブルク皇帝に対する「帝位のっとり作戦」を画策していることは事実なんですが、それでも、「女関係の悪い噂」というのも最終的に自殺に追い込むほど悪い罪というわけではないですし、「帝位のっとり作戦」に関しては一幻影師ごときが口を挟むような問題じゃないですよね。
 ですから、この皇太子に対してアイゼンハイムが取った行為って、見方によっては、ただ単に他人の婚約者を再び自分のものにしたいがためにとったものすごく巧妙でありかつものすごく自己中心的な「嫁さんのっとり作戦」と解釈することができるんですよ。
 実際、皇太子は、最終的に追い詰められて自殺する時、側近の警部に対して「国家が弱体化しているというのに、誰一人何も使用としない!!私が立て直さなければ誰がこの国を支えるというのだ!!!」的なことを主張するんです。
 これって、聞いててちょっと納得しちゃったんですよね。
 ハプスブルク帝国のように君主による統治が行われている国であれば、現行の政治体制に不満がある場合、次代の国王である皇太子が皇帝に退位をせまるというのもわからない話ではないですし、確かに、唯我独尊的なところはあるとはいえ、この皇太子のキャラクター設定は「嫌味なほど頭の切れる人物」ですから、皇帝としての器はそれなりに持っていた人物なんじゃないかと思うんです。
 それなのに、たかだか一人の幻影師が抱く「恋人と一緒にいたい!!」というわがままな願望によって、皇太子は婚約者を奪われたばかりか、自分の計画まですっぱ抜かれて追い詰められ、最終的には拳銃自殺にまで追い込まれるわけですから、見方によっては、本当にいい迷惑という感じがしないわけでもないですよね。
 もちろん、本作のような映画に対して、そういううがった見方をするのは間違いなんでしょうけど、それでも尚且つ、見終わった後によくよく考えてみると「んッ?」という疑問が残らないでもなかったですね。
 でも、そうはいっても、一本の映画としてみた場合はものすごく完成度の高い映画だと思いますし、ストーリーの練りこみ方も、変化球的なひねり方ではなく、王道のど真ん中をいくような作りこみ方なので、老若男女誰に薦めてもそれなりに楽しめる良作だと思います。


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