グミ・チョコレート・パイン
監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:石田卓也、黒川芽以、柄本佑、金井勇太、森岡龍、マギー、甲本雅裕、大森南朋、山崎一、高橋ひとみ、犬山イヌコ
時間:2h07
近所のミニシアターでみてきました。
たまたま私の観にいった回がそうだったのか、客の入りがあんまりよくなかったので、「あれっ、期待はずれなのかな…」と思い、ちょっと不安になったのですが、実際に見てみると、客の入りと反比例してものすごくいい映画でした。
大槻ケンヂの小説が原作ということでしたが、「青春」っていう言葉に含まれている、きれいな部分も、汚い部分も、恥ずかしい部分も、かっこいい部分もぜんぶ詰め込んだような仕上がりで、原作者だけでなく監督をはじめとした作り手の側が自分自身の過去のモヤモヤ感とものすごく誠実に正直な気持ちで向かい合った結果生み出された作品であるという雰囲気がヒシヒシと伝わってきました。
観ている最中も、観終った後も、「ガッツリつかまれた感」があったので、久しぶりにおなか一杯になった作品でしたね。
ただ、私自身がこの映画と誠実に向き合ったとき、この映画の「核」の部分をどれほど理解できているかということになると我ながら大いに疑問なんですよね。
私は1979年生まれです。
つまり、私が10代という時間を過ごしたのは1990年代なんですよ。
かたや、本作の舞台設定をみてみると、この映画の時代設定は1980年代なんです。
これねぇ…、私だけなのかそれとも90年代以後に10代という時間を過ごした人たち全員に共通の気持ちなのかわからないんですが、明らかに、80年代以前に青春時代を過ごした人々の「青春」に対するイメージと、90年代以後に青春時代を過ごした人々の「青春」に対するイメージって違いますよね。
「具体的に何が違うのか?」といわれると、まぁ、正直、「う〜〜ん…」みたいな感じになってしまうんですが、それでもねぇ、やっぱり、何かが違うんですよ。
少し具体的な話をすると、私をはじめとした90年代以後に青春時代を過ごした人がこの映画を観たときに感じる「いい映画だなぁ…」っていう感覚は、『Always三丁目の夕日』を観たときに感じる「いい映画だなぁ…」っていう感覚に近いと思うんですよ。
いまさら言うまでもないことですが、『Always三丁目の夕日』ってファンタジーじゃないですか。
昭和三十年代っていう時代を思いっきり美化して観る人に無条件に「あの時代は良かったなぁ」っていう魔法をかける。ある意味で、ディズニーランドのエレクトリカルパレードと同じ作用を持っている映画、それが『Always三丁目の夕日』です。
もちろん、本作『グミ・チョコレート・パイン』は、80年代を過ごした自分達のあり方を無駄に美化することもないですし、かっこ悪いところも汚いところもぜんぶさらけ出していく感じの映画なので、『三丁目の夕日』とは明らかに方向性の違う映画なんですが、それでもなおかつ、「あの頃」っていう仕方で特定の時代に焦点を当て、劇中に描かれる登場人物の生き方からある種の「共感」を引き出すという手法は共通だと思うんです。
そうなると、この「共感」という点で、私をはじめとした90年代以後に青春を送った人達は、80年代以前に青春時代を送った人たちに比べて、圧倒的に「共感」のクオリティーが低いんです。
もっとはっきり言うと、登場人物の一挙手一投足そのすべてに「壁」を感じてしまうんです。
「青春」というものの一つの形式として「こういうのもいいなぁ…」とは思うけれども、「こういうのあったなぁ…」とは思わない。
そんな感じですね。
「10代」とか「青春」って、何かにつけて特別な時代のように扱われていますけど、この「青春は特別な時代である」っていう情報を流している人たちって、たぶん、80年代以前に10代を過ごした人たちだと思うんですよね。
でも、90年代以後に10代を過ごしたわれわれにとって、「青春」とか「10代」って人生のそれ以外の時代と比べてそれほど特別な時代じゃないんです。
もちろん、90年代以後に10代を過ごした世代が経験している時代なんて、所詮は、一ケタ代、10代、20代程度のものなんですけど、他の二つ、つまり、一ケタ代や20代と比べて、10代ってそれほど特別な時代じゃないんです。
これ、もっというと、たぶん、自分達がこれから迎えるであろう30代、40代、50代、60代、70代という時代と比べても10代ってそれほど特別な時代じゃないと思うんです。
つまり、私も含めて90年代以後に10代を過ごした人って、どの時代をとっても「特別感」のない無尽蔵な「のっぺり感」のなかで生きていると思うんです。
私個人としてはこの「のっぺり感」が好きですし、それはそれでいいこともたくさんあるので、何の文句も無いんですが、80年代以前に10代を過ごした世代が描き出す「青春像」に対して、われわれの世代はその「核」の部分で絶対に共感できないと思いますね。
なんか、途中から、妙に小難しい話になりましたけど、本作を観ながら、「いいなぁ」と思うと同時に、作品と自分との間にものすごく分厚い「壁」のようなものを感じたというのは紛れもない事実ですね。