マリヤのお雪
監督:溝口健二
出演:山田五十鈴、原駒子、夏川大二郎、中野英治、梅村蓉子、歌川絹枝
時間:82分
近所のミニシアターが行った三週ぶち抜き企画『溝口健二特集』の中で上映された一本です。
朝一の上映回だったので、慣れない早起きをして、眠い目をこすりながら観に行きました。
さっそく、館内に入ろうと思ったのですが、ここで、ミニシアターのスタッフの方に呼び止められて、「本作は、かなり古い作品ですので、映像と音声にかなり難があるとは思いますがご了承ください」と言われました。
1935年の作品ですから、多少のことは仕方ないですから、素直に「あっ、はい…」と答えて館内に入ったのですが、上映が始まる直前にも、スクリーンの前にスタッフの方が立って、さっきと同じ説明をしました。
何でも、フィルムの古さにプラスして、フィルムのサイズが通常の35ミリではなく16ミリなので、このミニシアターの映写機と相性が悪いとのことでした。
理由は十分に納得しましたし、こちらも、これだけ古い映画を見に来ているわけですからある程度の覚悟はしています。
でも、さすがに二回も念を押されると、「えっ、そんなに…」って思うじゃないですか。
で、説明が終わった後、すぐに上映が始まったんですが、うん、確かに、二回説明するだけのことはありました。
画質と音声、ムチャクチャ悪いです。
画質もお世辞にもいいとはいえないのですが、それ以上に気になったのは音声ですね。
映画全編を通じて港の汽笛のような「ボ〜ッ」という音が響いています。
これはちょっと酷かったですね…
さて、映画の内容についてですが、清らかな心を持った田舎芸者の“お雪”が、金持ちにさげすまれたり、身を犠牲にして惚れた男を助けたりといった、他の溝口作品と大体同じような内容です。
映画の部隊は西南戦争真っ只中の九州です(最初、部隊設定がいまいちわからず、劇中の台詞で「大本営」と言っていたので第一次大戦が部隊なのかと思っていたのですが、どう見ても日本国内の内乱だという点と、「官軍」や「西郷」という言葉が出てきたのでやっと西南戦争が部隊だと言うことがわかりました)。
戦火が拡大してきたので、お雪は芸者仲間の“おきん”といっしょに村を出るのですが、移動手段がほとんど軍に押さえられていて、二人は一代の乗合馬車に金持ち夫婦と同乗することになります。
ここに出てくる「金持ち夫婦」が露骨に嫌なやつなんですよ。
最近の映画って、キャラクターの設定が複雑だったりしますから、ものすごくわかりやすい嫌なやつってあんまり出てこないじゃないですか。
でも、この当時の映画ってわかりやすい嫌なやつが普通に出てくるんですよね。
この金持ち夫婦はそんなステレオタイプの嫌なやつです。
とりわけ、食べるものがなくなって、お雪とおきんが持っていた弁当を金をつんで買おうとするシーンなんか、いやらしさ加減が露骨にあらわれています。
ていうか、あれなんですよ。この金持ち夫婦、芸者だっていうことでこの二人を最初はものすごく蔑んでいたんですよ。ある種の職業差別ですね。
ところが、自分達が腹減って、芸者二人が食い物を持ってるとわかったとたんに、コロッと態度を変えて金で何とかしようとするんですよね。
ここまでわかりやすいやつも珍しいんじゃないかと思うんですけど、まぁ、このシーンだけでも金持ち連中の「嫌なやつ加減」は伝わりますよね。
でも、映画では、金持ちが嫌なやつとして描かれてますけど、実際のところはどうだったんでしょうね?
西南戦争が起こった当時と言えば、明治初期ですから、その頃の金持ちって言ったら、本当に一部のお大臣だけでそれ相応に立派な人だったんじゃないかという気もするんですけどね。
どうなんでしょう?
後半部分は他の溝口映画と同じパターンですね。
西郷川の軍勢にとらわれていた官軍の脱走将校が、お雪とおきんの店に隠れているんです。
二人が帰ってきたとき、この脱走将校を見つけるんですが、二人はこの将校に惚れてしまって、かくまうんですよね。
西郷側にそのことが知れたら、自分達もただではすまないのに、かくまって脱走させるんです。
自分の身を犠牲にしてボロボロになった男を助けるけなげな女
まだ、溝口映画は3本ぐらいしか観たことがないのですが、それら全てにこのタイプの女が出てきます。
多分、この手の女性像は、一昔前のカプコンのゲームに出てきた“Paw”や“弥七”と同じような存在なのでしょう。
これが出てくると、「あっ!!溝口!!!!!」みたいな、そういう存在なんでしょうね。
画質と音声は悪かったですけど、コンパクトにまとまっていて、結構おもしろい作品でした。
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