ミスター・ロンリー
監督:ハーモニー・コリン
出演:ディエゴ・ルナ、サマンサ・モートン、ドニ・ラヴァン、レオス・カラックス、ヴェルナー・ヘルツォーク
時間:1h51
近所のミニシアターで観てきました。
いきなり結論ですが、この映画、劇場に座って観ているあいだは全くと言っていいほどおもしろくありません。
「自分」というものがわからず、マイケル・ジャクソンのモノマネをする以外に自分の生き方がわからない男が、同じく、マリリン・モンローのモノマネをすることでしか存在できない女と出会い、初めて「恋」というものを経験する。やがて二人は、スコットランドの山村にたたずむモノマネ芸人ばかりが住む湖上に移り住み、そこで他のモノマネ芸人達と一緒に共同生活を送るようになるが…
大まかに書くとこんな感じのストーリーなんですが、本作では、本編にあたるこのストーリーの間に、パナマの尼さんが神を信じてパラシュート無しでスカイダイビングするというまた別のストーリーが、ところどころ挿入されます。
この二つのストーリーは最初から最後まで一切の関連性を持たずに進行していくんですが、この不可思議な映画の作りが、本作全体の難解さを無駄に引き上げていて、スクリーンの前でただシレーッと座っているだけだと、「おもしろい」という感想を持つところまでストーリーを読み込めないんです。
登場人物の振る舞いが持つ意味合いを把握することや、二つの物語を往復するときのスイッチの切り替えに感覚が追いつけなくて、ふと気づくとただなんとなく時間だけが経っているという状況になってしまいます。
しかし、映画を観終わって、帰宅する途中の夜道で本作のことをあれやこれやと思い返してみると、バラバラになっていパズルのピースが少しずつ組み合わさっていくように、自分のなかでこの映画の全体像がふんわりと形作られていきます。
私個人としては、一人の人間が「その人」として誕生する過程を描いた作品として解釈しましたが、本作に対する解釈が成立するのって、スクリーンの前に座っている段階じゃ無理なんです。
映画って、スクリーン向きの作品とDVD向きの作品の2パターンがあると思うんですが、本作は明らかにDVD向きの作品ですね。
映画館で他の観客と一緒にある種の連帯感を味わいながら作品の雰囲気を楽しむというよりは、部屋で一人読書をするような心持で影像というページを少しずつめくっていくような、そういう楽しみ方がマッチする映画ですね。
途中、ちょっとだれる部分もありますし、けっこう好みの分かれるタイプの映画だと思うので、万人にお勧めすることはできませんが、「古いDVDをチョクチョク見返すよ!」なんていうタイプの人であれば、コレクションの一つに加えておいて決して損はしない作品だと思います。