殯の森
監督:河瀬直美
出演: うだしげき、尾野真千子、渡辺真起子、ますだかなこ、斉藤陽一郎
時間:1h37
近所のミニシアターで見てきました。
シアターの前で入場を待っていたら、前の会を見終わった人たちが劇場内からぞろぞろと出てきて、地方都市のミニシアターではあまり見られないほどの盛況ぶりに、この映画の話題性が感じられました。
ただ、そのわりに、私が見た回は私も含めて10人ほどしか入ってなかったんですけどね…
よく、芸能人なんかが、「自分が店に入るとその店がドンドン込んでくる」なんてことを言っていたりしますが、私はその逆なのかもしれません。
さて、映画の内容についてですが、その話題性とは裏腹に、正直、「………」という感じです。
カンヌでグランプリを取るぐらいですし、先にも書いたように、お客さんだってそれなりに入っていると思われる作品なのですが、私個人としては「いまいち」といった感じがぬぐいきれません。
奈良の田舎にある民家を改造した老人ホームで、息子を亡くした「真千子」と、妻を亡くした痴呆症の老人「しげき」が出会う。ある日、「しげき」と一緒に車で出かけた真千子は、ひょんなことから「しげき」を追って深い森の中に分け入ることになる。その森の中で、二人は、「しげき」が「お墓」だという場所に辿り着き、そこで、静かな時間を共有する。穴を掘り、そこに体をうずめる「しげき」とオルゴールを坦々と回し続ける「真千子」。そんな二人の姿にかぶさるように、
殯 〜もがり〜
敬う人の死を惜しみ、
しのぶ時間のこと
また、その場所の意
という、字幕が表示される。
大まかに書くとこんな感じのストーリーなんですが、う〜〜ん……、どうなんでしょう……
扱っているテーマは「生と死」というすごく根源的なものですし、舞台となっている「森」もすごく存在感があっていいと思うんですけど、映画としてつまらないです。
ヨーロッパにはない独特の「森」の雰囲気と、その森の中で痴呆症の老人が行う儀式的とも思える独特の行動が、欧米の人たちから見ると「東洋の霊性」のように見えたのかもしれませんが、日本人である私の目から見ると、「なんか、違う」感じがします。
日本人の死生観って、もっと生と死が近くにあるものなんじゃないかと思うんですよね。
落語なんかにあらわれる「あら?死んじゃった!」みたいな感覚、もしくは、この世に未練を残して化けて出てくるという幽霊の行動のように、この世とあの世が完全にくっついてしまっているような距離感の近さ。
それが日本人の死生観なのかなぁという感じがするんですよね。
一回死んだのに、界王様のところに行って「元気玉」を教わって帰ってくるっていう『ドラゴンボール』的な話、こういうのにすごく日本的な感覚を感じるんですね。
ところが、この『もがりの森』の場合、生と死の距離が妙に遠いというか、神々しい感じはあるんですけど、その神々しさが邪魔というか、とにかく、「生と死」っていうものを厳かに扱いすぎている感じがするんです。
もっと、おちゃらけてもいいんじゃない…
そんな感じですかね。
だから、そういう意味で言えば、このあいだ同じミニシアターで見た三木聡監督の『図鑑に載ってない虫』の方が「生と死」という意味では共感できました。
結局、本作の死生観って、「着物を着た外人」みたいなもんで、表面的には和風だけど、根っこの部分は実はものすごく欧米的なんじゃないかなと、そんな風に感じましたね。