浪華悲歌
監督:溝口健二
出演:山田五十鈴、三木稔、梅村蓉子 他
時間:1h11
近所のミニシアターが催した3週ぶち抜き企画「溝口健二特集」の中で上映された一本です。
1936年上映の作品ということで、やはりフイルムが劣化していて、一部映像と音声にひどいところがありましたが、映画全体としては、まだなんとか物理的に「見られるレベル」を保っているように思います。
以前、VHSで黒沢明の『虎の尾を踏む男達』を見たときは、音声がぼろぼろになっていて、終始何を言ってるのかよくわかりませんでした。
もっとも、『虎の尾を踏む男達』の場合は、黒沢の録音やフィルムの劣化以前に、大河内伝次郎の渇舌の悪さっていう根本的な問題がありますから、仕方ないですけどね。
ですから、まぁ、さすがに古くて聞き苦しいとはいえ、『虎の尾を踏む男達』に比べれば本作はだいぶましですね。
さて、内容についてですが、いわゆる現代劇ですね。
もっとも、現代といっても、あくまでこれが公開された当時の現代ですから、21世紀を生きている我々の感覚からすると、これもまた昔話という感じがしないでもありません。
実際、山田五十鈴が演じる本作の主人公の職業って、電話の交換手ですからね。
当時としては花形職業だったらしいですけど、我々の感覚からすると、「そういう時代もあったんだねぇ…」といった感じです。
でも、そんな時代背景の落差とは対照的に、描き出しているテーマは結構不変的なんですよね。
いわゆる、「女の転落人生もの」です。
私が見た溝口作品は本作でまだ3本目なのですが、今のところ、最終的に「幸せになる女」って、一人も出てきてません。
溝口作品って他の作品もそうなんでしょうか?
本作の主人公も、最初はごく普通のエリートOL何ですけど、父親の借金やら兄の学費やら金銭関係の問題でドンドン転落していきます。
はじめは社長の愛人になり、続いては、株屋の男に気のあるふりをして金だけ騙し取り、その株屋が文句を言ってくると、自分の恋人に用心棒役をやってもらって、「あたいのバックにはねぇ、こんな怖い男がついてるのさ!!!!!!」的なやり口で反対に脅しをかけます。
いわゆる、「美人局by myself」ですね。
で、当然そんなことばっかりやってると、警察に逮捕されてしまい、出て来たときには家族もすっかり冷たくなっているという落ちなんですが、まぁ、典型的な坂道コロコロ作品ですよね。
この映画の説明にはよくリアリズムなんていう言葉が使われますけど、ここまで綺麗に落っこちると逆に物語りのようです。
『西鶴一代女』もそうだったんですが、まだ、不幸な溝口映画しか見たことがありません。
溝口作品の中にそういった作風のものがあるのかないのか知りませんけど、もしあれば、今度はもう少しハッピーな雰囲気の映画も見てみたいです。
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