列車に乗った男
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ
時間:1h30
『髪結いの亭主』のパトリス・ルコントが監督した映画です。
最近のフランス映画は『taxi』やら『ヤマカシ』やら『クリムゾン・リバー』やら、ハリウッドのバッタモンみたいな作品ばかりになっていますが、この『列車に乗った男』はそんなバッタモン系フランス映画とは一線を画する芯の通った作品です。
最新作の『親密すぎる打ち明け話』もそうなんですが、パトリス・ルコントの作品は本当に独自の雰囲気がありますよね。
登場人物と登場人物との間に薄〜い膜が張っているかのように、人と人との距離感がものすごく微妙なんですよ。
ペタッと触るんじゃなくて、肌の表面に生えている産毛をソワソワソワソワっと撫であげるような独特の距離感です。
『髪結いの亭主』のように、登場人物が男性と女性の場合はその独特の距離感がものすごく質の高いエロスな雰囲気に結びつくんですけど、本作のように登場人物が男性二人の場合、この距離感は「気まずさ」でもなく、「近寄りがたさ」でもない、「親しみを持っているんだけれども、今一歩踏み込めない」といったきわめて微妙な「気遣い」のような感覚を生むんです。
年老いた文学教授と野性的で寡黙な銀行強盗、ひょんなことから一つ屋根の下で生活をともにすることになったこの二人が、「土曜日」までの数日間を静かに暮らす。
この作品、ストーリーを文章で書いてしまえば、たったこれだけの作品です。
でも、たったこれだけのことがパトリス・ルコントの手にかかると、ものすごく上質で深みのある作品に仕上がるんです。
私の勝手なイメージですけど、パトリス・ルコントが持っているこの感覚ってやっぱり「ヨーロッパ」だと思うんです。
アメリカや日本、中国、韓国といった国々では、この感覚ってないと思うんですよね。
やっぱりヨーロッパ、それもフランスって感じがするんです。
興行収入とかの大人の事情が関係しているんでしょうか?
最近はどこの国でもハリウッドのバッタモン的な映画を量産していますが、この『列車に乗った男』のような非アメリカ的な雰囲気を持った映画も残していかなければいけないと思います。
やっぱり、興行収入が上がらなくても、良いものは良いですから。