サルバドールの朝
監督:マヌエル・ウエルガ
出演:ダニエル・ブリュール、レオノール・ワトリング、レオナルド・スバラグリア、イングリッド・ルピオ
時間:2h15

 近所のミニシアターでみてきました。
 この映画、私が住んでいる地方ではミニシアターでしか上映されないんですが、たぶん、これ、もともとはシネコン系の大スクリーンで流すような作品なんだと思います。
 派手なアクションシーンなんかは無いんですけど、なんていうか、映画全体の雰囲気的なものがミニシアター系じゃないんですよね。
 さて、本作は、フランコ独裁政権下を舞台にした作品なんですが、何でも、実話をもとにして作られた作品らしいですね。
 正義感にあふれる若者サルバドールは、抑圧的な政権と社会に怒りを募らせ、自由という理想に燃えて反体制運動にのめりこんでいきます。「労働者を救うための資金調達」という大義名分を掲げて、武器を調達し、仲間と共に銀行強盗を繰り返すサルバドールですが、あるとき、サルバドールたちを追っていた秘密警察の追跡を受け、その際に警部の一人を射殺してしまいます。逮捕されたサルバドールは、正当な裁判も受けられず、独裁政権によって見せしめのため死刑を宣告されてしまいます。残された短い時間の中で、家族、弁護士、恋人といったかれの身近な人たちだけでなく、刑務所の看守までもがサルバドールの人柄に引かれ、サルバドールの死刑を撤回するよう運動します。しかし、最終的に、死刑判決が覆ることはなく、死刑は執行されてしまいます。ですが、サルバドールの葬儀には彼の死を悼む多くの人がつめかけ、彼の死に影響を受けた人々が行動を起こし、最終的にはその行動がフランコ政権の打倒につながっていく…end
 大まかに書くとこんな感じの内容なんですが、これ、内容だけをこうやって書いていくと、このサルバドールがものすごくいい人っぽい感じに見えますが、実際に映画の中で描かれるサルバドールって、それほど「いい人」っていう感じでもないんですよね。
 実際、「独裁政権を倒す」とか「労働者を救う」っていうそもそもの目的は、まあいいかなと思うんですけど、その目的を達成する過程としてサルバドールとその仲間が起こす行動が「銀行強盗」っていうのはどうなのかなっていう感じがしませんか。
 冗談交じりで拳銃を振り回し、笑いながら強盗を繰り返すサルバドールたちの行動は、個人的に、どうも、容認できないんですよね。
 ていうか、「銀行強盗+警官殺し」だと、死刑判決も打倒なんじゃないかっていう気がするんですけどどうなんでしょう。
 でも、そうはいっても、死刑が確定したあと、サルバドールとその周囲の人たちとの交流は涙を誘いますよね。
 特に、この映画を見た誰しもが感じることだと思うんですけど、看守の人が心変わりしていくさまにはかなりグッと来ますね。
 最初は、収監されたサルバドールをちょといびっていたんですが、バスケットや互いの父親について語り合うことを通じて、互いに少しずつ打ち解けていく過程はこの映画最大の見せ場です。
 主人公であるサルバドールの行動はいまいち納得できませんし、そういった意味で感情移入しにくいところもあるんですが、実話が持っている迫力にも後押しされて、後半三十分はウルウルッと来そうになるのをグッとこらえながらスクリーンを見つめていました。
 二時間以上の映画なのでちょっと長いかなという感じもするんですが、それでも、決して間延びすることなく、人の心を打つ名作だと思います。

Official Site

Home