親密すぎるうちあけ話
監督:パトリス・ルコント
出演:サンドリーヌ・ボネール、ファブリス・ルキーニ、ミシェル・デュショソーワ、アンヌ・ブロシェ、ジルベール・メルキ
時間:1h44
パトリス・ルコントの作品って、独特の雰囲気がありますよね。
ものすごく高級な香水を、直接ブシュッと吹き付けるのではなく、空中にシュッと吹きかけて、その空気と香水が混ざった空間の香りを楽しむみたいな、すごく柔らかくて薄い香りの皮膜をかぶせているかのような独特の雰囲気ですよね。
個人的に、パトリス・ルコントの作品以外でそういう雰囲気を感じたことはないですから、やっぱり、この人にしかできない「味」というか、本当の意味での「個性」なんでしょうね。
パトリス・ルコントの作品は、これまで『髪結いの亭主』や『列車に乗った男』などを見てきましたが、「はずれだなぁ〜」と思ったことがなかったので、今回も期待して見たのですが、やっぱり、期待通り、すごく良かったですね。
登場人物の中でセクシーな服装をしている人は一人もいませんし(サンドリーヌ・ボネールが少し胸の開いた服を着ていたシーンがありましたけど、あれくらいは別に「セクシーな衣装」という感じではないですよね)、それっぽい映像を露骨に流すようなシーンは一つもないんですが、なぜか全編にわたって「柔らかなセクシーさ加減」が漂ってるんですよね。
精神科医の部屋と税理士の部屋を間違えてしまった女が、自分と夫との問題を税理士に話して聞かせる。初めは戸惑っていた税理士も次第にその女の雰囲気に魅了されていく。
大まかなストーリといえば、こんな感じなんですけど、「男が女に魅了されていく過程」っていうのが、この映画ではものすごく上手く描かれていますね。いつの間にかいつの間にか、吸い寄せられるようにはまっていって、いつしか他のお客とかもどうでもよくなるほどのめりこんでしまうという、その過程がありありとわかります。
なんだかこういう書き方をすると、「女にはまった男の転落人生」のように聞こえるかもしれませんが、この映画、最終的にはハッピーエンドです。
出会って心を通わせたことで、お互いが今の自分の殻を破って、新しいところへ向かっていく。
この映画のほとんどのシーンは(多分パリが舞台なんでしょうけど)なんとなく暗い色彩で、太陽がサンサンと降り注ぐようなシーンは全くないんですが、映画のラスト(そうですねぇ、ラスト十分ぐらいですかねぇ)にはパリから移り住んだ南仏の明るい太陽の下で新しい人生を別々に歩き始めた二人の姿が映し出されます。
この太陽の光がこの映画が描いてきたそれまでのトラブルや問題の全てを一気に浄化してくれているようで、ただ窓から差し込んでくる光なんですけど、柔らかですごく神々しい光にもみえました。