ダーウィンの悪夢
監督:フーベルト・ザウパー
時間:1h52

 近所のミニシアターでみてきました。
 このミニシアターは、年間の上映本数がかなり多いので通常の作品であれば1週間、もしくは、長くても2週間ほどで上映終了になってしまうのですが、この『ダーウィンの悪夢』は上映期間が3週間ということで、ミニシアター的にもかなり押している作品のようです。
 で、実際に見てみた感じですが、かなり興味深い作品でした。
 確かに、扱ってる題材が題材ですからどうしても重い映画にならざるを得ないわけですけど、その重さを跳ね除けて110分間しっかりとスクリーンを見つめさせてくれるだけの力のある作品でした。
 少し前に、同じくアフリカを題材にした実話に基づく映画で『ホテルルワンダ』という作品を見たのですが、アフリカの現状を題材とした作品で明るい色調のものって少ないですよねぇ…
 やっぱり、それだけ、現代のアフリカはしんどいところなのでしょう。
 内容的には「風が吹けば桶屋が儲かる」的な連鎖反応が、最悪の形式で生じている地域のありさまを淡々と描くという、それだけの映画です。
 タンザニアのウィクトリア湖にナイルパーチという聞きなれない名前の魚が放流されたところから悲劇が始まります。

湖に外来種であるナイルパーチを放流する

ナイルパーチが湖の在来種である他の魚を絶滅させながら爆発的に繁殖する

たくさんいるので、人間がナイルパーチを食用に捕獲し、加工する

加工したナイルパーチをヨーロッパや日本に輸出する

湖の周りに魚の加工業という新しい産業が生まれる

仕事を求めて、農村から男達が働きに集まる

働き手を失った周囲の農村では貧困が加速する

湖周辺では、働きに集まった男達目当てに売春が横行する

エイズが蔓延し、それと同時に、親のわからないもしくは親に捨てられたストリートチルドレンが爆発的に増加する

レイプ、ドラッグ、殺人など様々な犯罪が増加する

経済的な理由で学校に行けない人達が増加する

満足な職に就けない人が増える

手っ取り早く高い収入を得られる仕事につきたいという人が増える

内戦などの様々な紛争が頻発するアフリカにおいて、兵隊は給料が高い

兵隊になりたいという人が増える

高い給料を得るため、戦争を望む

武器のニーズが増える

ヨーロッパ諸国がナイルパーチを輸送する飛行機を使ってアフリカに武器を運ぶ

戦火が拡大する

多くの人が死ぬ

武器を輸出する側は儲かる

 とまぁ、このように、一見すると何の関係も無いような「魚の放流」と「戦争の拡大」がものの見事に結びついてしまうわけです。
 最終的には話がものすごく大きくなってしまう映画なので、ものすごく多様な解釈が可能だとは思うんですが、どのような解釈をするにしろ、この映画を見る際に一つだけ忘れてはならないことがあります。
 それは、この映画の登場人物の中に、
一人も悪い人が出てこない
という点です。
 武器を運んでいるパイロットも、そのパイロット相手に売春している人達も、魚の加工工場を営む経営者も、兵隊は給料がいいからという理由で戦争を望む人達も、もっといえば、ヨーロッパ諸国でアフリカに輸出する武器を製造販売している会社の人達さえも、みんながみんな、その一人一人はごく普通の欲望を持ったごく普通の人達なんです。
 普通の人達ばかりが集まっているのに、なぜ、普通ではないことが起こってしまうのか。
 ある意味、ものすごく無責任なことをいうかもしれませんが、この映画を見ていて、ふと、私は、「人間の業」という言葉を思い出しました。
 どんなにそれが普通の人達であっても、「人間」というものが集まってしまうと、必然的にこういうことが起きる。
 人間には様々な側面があるとは思いますが、人間が持っている
どうしようもない負の側面
というものをこの映画で見せ付けられたような気がしました。
 それから、余談ですが、このナイルパーチという聞きなれない魚は、日本では、「白スズキ」という名前でスーパーなどに行けば普通に販売されています。

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