立喰師列伝
監督:押井守
出演(声):山寺宏一 他
時間:1h30

 DVDやビデオで見るのとは違って、実際に映画館に足を運ぶと、その映画を見る客層が如実にわかる場合があります。そして時折、その客層が異常なほど偏っている映画に出会うことがあります。
 吉永小百合が渡辺健の妻役で出演した『北の零年』を映画館で見たときは、シネコンの大スクリーンに向かう三百席近い座席のうち、その三分の二ほどを、四十代後半以上の年齢層が埋め尽くし、二十代と思われる観客は私一人でした。
 また、近所のミニシアターでリバイバル上映された『風とともに去りぬ』を見たときも、前九十席ある座席のうち八十九席が三十代以上の女性で埋め尽くされ、その中でただ一人二十代男性の私がぽつんと鑑賞しているという状況でした。
 この『立喰師列伝』も上述した二本の映画と同様、客の種類が明確にわかる映画でしたね。
 私が住んでいるのは東京の秋葉原からはるか離れた地方都市です。しかし、にもかかわらず、この映画公開の当日、ミニシアター内の座席、全九十席は世間一般に「アキバ系」と呼ばれる人たちと同じような雰囲気を持つ人たちで埋め尽くされていました。
 監督の押井守がそうせるのか、はたまた、この映画に特有の雰囲気がそうさせるのか、その原因は定かではありません。しかし、現実に、その日、近所のミニシアターはそっち系の客で埋め尽くされていたんです。
 「友達と思われたらどうしよう……」「こんなにたくさん、普段どこにいるんだ……」そんな不安と疑問を抱えながら、私は一人、一番後ろの列の、一番端っこの席でこの映画を観ていました。
 さて、映画を見た当日の客に対する感想はそれぐらいにして、この映画自体に関してですが、まぁ、なんとも、みようによっては踏み絵のような映画だとおもいますね。
 私は個人的にこのアニメが提供するような笑いは好きですし、実際、映画館でもクスクス笑いながら観ていました。
 でも、この映画、嫌いな人には徹底して受け入れられない映画でしょうね。
 内容は、戦後の闇市に突如現れた「立喰師」と呼ばれる「仕業師」達と、彼らの標的になった飲食店の店主との戦いを淡々と描いている作品なんですけど、この映画、やっていることがとにかく馬鹿馬鹿しいんですよね。しかも、そのものすごく馬鹿馬鹿しい内容を一切笑いを挟むことなくひたすらシリアスに語るんです。
 その「やり口」の馬鹿馬鹿しさを受け入れることができる人にとっては、この映画は相当面白いと思います(実際、私はものすごく面白かったです、特に「月見の銀二」と「ハンバーガーの哲」そして「中辛のサブ」がよかったですね)。でも、受け入れられない人にとってはどうでしょうね。
 映像も今まで見たことのない独特な映像ですし、ストーリーも荒唐無稽です。それに加えて、そのやり口までがとんでもないとなったら、取っ掛かりを見つけられない人にとっては、最後まで置き去りにされたまま、ただ「何だこれ・・・」と思いながら100分が過ぎ去っていくでしょうね。
 「見る者を選ぶ」、この映画はそういうタイプの映画です。

Official Site

Home