チーズとうじ虫

監督:加藤治代
出演:加藤直美、小林ふく
時間:1h38

 近所のミニシアターで見てきました。
 休日に観に行ったんですけど、全然お客さんが入ってなかったです。
 ていうか、ここ最近、このミニシアター、客の入りが減っているような気がするんですけど、大丈夫なんでしょうか…
 このミニシアターがつぶれると、週末の私の暮らし方がかなり影響を受けるのですが…
 なんとかがんばってもらいたいものです。
 さて、映画の感想ですが、う〜ん、なんていうか、最終的には「ドキュメンタリー映画って何?」っていう話になると思うんですけど、この映画は、どうなんでしょう。
 実際に観ていただけるとわかるんですけど、この映画って、ホームビデオで取った映像をつなぎ合わせただけなんですよ。
 ホームビデオって、ある意味で究極のドキュメンタリーですし、それをつなぎ合わせただけっていうことは、ドキュメンタリーとは名ばかりで編集しまくって完全に創作映画になってしまっている『ボーリング・フォー・コロンバイン』などとは違って、本作はかなり純度の高いリアリティーをもった本当の意味での「ドキュメンタリー」だということができるでしょう。
 でもさ、でも、ですよ。
 この映画、あまりにも、「生感」が強すぎて、「映画を観た!!!」っていう感じが全然しないんですよ。
 映画館を出るときにも、NHKの深夜番組を見たような変なテンションになってしまいました。
 ですから、映画を観たとき特有の満足感みたいなものは、この映画からは得られません。
 ただ、ドキュメンタリーとしてみたら場合、この映画のレベルはけっこう高いです。
 癌を患って、死に向かっていく母親の姿を一切の飾り気無く描いていますから、癌患者やその家族が病気と戦う生の現場を露骨に見せてくれます。
 今、ここに「癌との闘い」ということを書きましたけど、この映画の中で描かれる「闘病」の様子に「闘う」というニュアンスはまったくといっていいほど無いです。
 髪を櫛でとかすたびに大量の髪の毛がゴソッと抜けたり、病状は明らかに進行していっても、そこで交わされる会話やその場の雰囲気に悲壮感は一切無く、むしろ、そこにあるのは温かみすら越えた、ごく普通の日常のたたずまいです。
 フィクションの映画やテレビのドキュメンタリーでも「癌」を扱う作品って、やたらと悲劇的な雰囲気の漂うものが多いですけど、本当の「闘病」って、日常の重さの中で日常と同化しながら坦々と進んでいくんだということが、本作を見ていて痛いほど伝わってきました。
 この映画のラストの方で、亡くなった母親の遺体が一切隠すことなくそのまんま出てきます。
 遺体をそのまま映し出す作品ってめったに無いと思うのですが、本作で映し出される遺体の姿には妙なおどろおどろしさは一切ありません。
 布団にくるまれて、白い布を顔にかけられて、静かにそこに横たわっている。
 ただそれだけです。
 死んでいるっていうことがわかっているのか定かではありませんが、孫が死んだおばあさんの布団の上にのしかかったりしています。
 その場の全てがどこか暖かいです。
 本来の人の死って、こういうものなんだと思います。
 戦場で、英雄的に死んだり、反対に、銃の弾に当たって、アッサリ死んでしまったり、自殺したり、殺されたり、色々な死に様はあるんでしょうけど、人間の本来の死に様って、こういう、暖かい坦々としたものなんだと思います。
 飾り立てられた「死」が氾濫する中で、本作のような作品は貴重だと思います。

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