東京画
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:笠智衆、ヴェルナー・ヘルツォーク
時間:1h28
小津安二郎の映画を通じて親しんでいた東京を、ヴェンダース自身が独自の視点で撮影したドキュメンタリーです。
この映画は1983年に撮影されたものです。
今の感覚でみると、そこに映し出される東京の町並みは24年前の古びたものに見えるかもしれませんが、ヴェンダースがあこがれていた小津安二郎の東京という観点から見ると、この映画に描かれている東京にも、すでに小津的な古きよき時代の面影(もちろん、小津の作品に残る町並みや雰囲気が絶対的に「古きよき」ものであるというわけではありませんが…)は残っていません。
この映画が映し出す東京にあるのは、パチンコ屋にゴルフ練習場、路上でツイストを踊る若者や竹の子族といった、その当時の風俗によって作られた都会の喧騒だけです。
この手のドキュメンタリー映画は、しばしば、映像に映し出される町並みをやたらと悲観的に捉えてつまらない文明批評のようなものを展開してしまいがちです。
しかし、この『東京画』にはそういったくだらない文明批評や、古いものが失われてしまったことに対する悲哀や嘆きといった要素は全く存在しません。
同じヴェンダースが撮った『ニックスムービー』という作品にも顕著に現れているのですが、ヴェンダースが撮るドキュメンタリーには、その対象をありのままに取ってやろうという意欲が感じられます。もちろん、映像になっている時点で、それは「ありのまま」ではないのですが、少なくともその意欲は十分に感じ取れますし、実際、そのドキュメンタリー映画の対象に対する監督個人の意思や考えのようなものが投影される割合を可能な限り少なくして撮影しているという印象は受けます。
現に、この映画に映し出される東京の町並みはじつに淡々としています。
しかし、その淡々とした映像にこちら側がそれを解釈する余地を残してくれているあたりがヴェンダースのドキュメンタリーのにくいところだと思います。
そんなヴェンダースですが、この映画の撮影中、パチンコ屋とゴルフ練習場にだけは何か特別な興味を引かれたようで、我々にとってはごく日常的なこの二つの娯楽に対して、哲学的ともいえる独自の見解を示しています。
この見解、確かに、聞けば「なるほど」という感じもしますが、正直、パチンコとゴルフ練習場に何もそこまでという感も否めないですね。
ヴェンダースというと『パリ、テキサス』をはじめとしたロードムービーに定評のある監督という感じがしますが、彼の取るドキュメンタリーもこれはこれで実に味のある優れた作品が多いです。
なかでも、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などは日本でも大ヒットしましたが、あまりメジャーになっていないドキュメンタリー作品にも優れたものがたくさんあるので、ぜひ、多くの人に見てもらいたいです。
最後に、余談ですが、この映画の中に映し出されるテレビ画面には『タモリ倶楽部』が映っています。
24年前から変わらぬスタイル、変わらぬオープニングで一つの番組をやり続けることができる「タモリ」という人物の偉大さを改めて感じました。
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