ONCE ダブリンの街角で
監督:ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ、ヒュー・ウォルシュ、ゲリー・ヘンドリック
時間:1h27

 近所のミニシアターでみてきました。
 日曜日のお昼の上映回に観に行ったんですが、メチャクチャ並んでました。
 私は地方都市手にすんでいるんですが、地方の映画文化は基本的に衰退しているので、映画館に人が並ぶなんていうのは、有名人が舞台挨拶に来たときか、宮崎アニメぐらいしかないんですけど、この『once ダブリンの街角で』に関しては、ミニシアターでの上映、しかも、たいした宣伝もしていなかったにもかかわらず、休日のお昼に大行列ですよ。
 私が行っているミニシアターは全90席なんですが、80人ぐらい入ってたんじゃないでしょうか…
 東京、大阪、名古屋といった大都市圏に住んでいる人にとってはなかなかわかりづらい話なのかもしれませんが、地方都市のミニシアターで客が劇場の外まで並ぶなんていうことはねぇ、本当に、めったにないことなんですよ。
 もうねぇ、本当に、大盛況で、正直ちょっと面食らったんですが、なんとか座れたので、ジックリと堪能してきました。
 この映画、ストーリー的には、本当にシンプルな作品なんですよ。
 穴の開いたギターを抱えて街角で歌うストリートミュージシャンの男と、楽器屋で昼休みに一時間だけピアノを弾くことを楽しみにしているチェコ移民の女、そんな二人がダブリンの街角で出会って、音楽を共通項にして、いつしか美しいハーモニーを奏でていく。
 ただ、それだけの話なんですよ。
 実際、映画も、二人の出会いで始まって、レコーディング終了で終わるんです。
 だから、本当に、ストーリー自体の広がりみたいなことを言い出したら、この映画はものすごく狭い密室みたいな映画です。
 ですが、そんな狭いストーリーの合間合間に挿入される音楽が、ストーリー全体にものすごく豊かなふくらみを与えているんです。
 やっぱりねぇ、音楽がガッチリしてるとすべてが丸くおさまっちゃいますよね。
 普通、映画音楽って、映画全体のストーリーや映像の雰囲気を食っちゃうほど強いものだと映画音楽としてはダメだと思うんですけど、この映画に関してはそういう考え方はあてはまらないですね。
 音楽が映画をグイグイ引っ張っていく感じで、本当にねぇ、すごくいいです。
 この映画のサウンドトラックが全米でヒットチャートの上位にランクインしたらしいんですが、この映画のサントラだったら「買おう」と思う気持ちもわかります。
 今まで、音楽は映画の脇を固める名脇役であってストーリーという芯の部分を食っちゃうのはまずいんじゃないかと思っていたんですが、この映画みたいに、音楽が映画全体を引っ張っていくっていう形も成立するんですね。
 なんか映画の見方に新しい始点を与えてくれた実りある作品でしたね。
 ただねぇ、この映画を見ながら、本当に心から思ったんですけど、押井守が言っていた「映画は国境を越えない」っていう台詞は正しいですね。
 この映画、ダブリンが舞台なんですけど、やっぱり、これ、「ダブリン」っていう都市の空気感を知っていると知っていないでは映画が持っている雰囲気の理解が全然違うと思うんですよ。
 私はパスポートも持っていない人間なので、「ダブリンの空気感」っていわれても、ジョイスの『ダブリン市民』が持ってる空気感ぐらいしか知らないんですけど、やっぱり、「ダブリン」ていう都市に対する肌感覚みたいなものを持っているとこの映画のよさはさらに深くわかると思うんですよ。
 ダブリンの空気と音楽っていう非物体的なものでガッチリくみ上げられた良作なので、万人にお勧めできる作品ですね。

Official Site

Home