靖国 YASUKUNI
監督:李纓
出演:刈谷直治、菅原龍憲、高金素梅
時間:2h03
近所のミニシアターで観てきました。
私が行きつけにしているこのミニシアターでは、本作が2週間にわたって上映されます。
ミニシアターに通いなれている人はわかると思うんですが、ミニシアターって、一つのスクリーンでたくさんの映画を上映するので映画の回転がけっこう速いんですよね。
一週間ぐらいで上映終了になる作品もざらにありますし、そもそも一度しか上映されない作品なんていうのも年に何本かあります。
ですから、そんな状況下で2週間という上映期間は「平均よりも長め」と考えることができます。
色々と話題になった映画ですから、この長めの上映期間も、客が過剰に集中してしまうことを考慮したうえでのミニシアター側の対応の一つなのでしょう。
実際、整理券などほとんど配ったことのないこのミニシアターでも、本作の上映時には何度か整理券の配布を行って、入場者の制限を行っていたようです。
現に、私は平日の夕方に観に行ったんですが、私が観に行った前の回(平日の14:00頃上映開始)は立ち見が出るほどの満員で入場制限がかかっていました。
また、私が観た回もかなりの入場者数で、全90席のシアター内が9割ほど埋まる満員御礼状態でした。
東京や大阪などの大都市圏はどうだかわかりませんが、地方都市の映画文化は衰退の一途をたどっているので、これだけ客が入るというのはある意味で異常事態です。
そんな感じで、まぁ、興行的には大盛況だったんですが、劇場内の平均年齢はムチャクチャ高かったですね。
低めに見積もっても、明らかに平均年齢60歳は超えているであろうと思われる状態で、30代目前の20代である私が恐らく劇場内の最年少でした。
やはり、それぐらいの世代の方々は、自分達が子供のころに体験した現実をどのようなものとして自分のなかで
整理すればいいのか、いまだに戸惑っているのでしょうか…。
さて、映画の内容についてですが、この映画、感想の冒頭でも書いたように、公開の是非をめぐって一悶着あったじゃないですか。
Official Siteをみてみると、最終的にはけっこうな数の劇場で公開されることになったみたいですけど、当初は、公開できるのかどうかも危ぶまれている感じだったじゃないですか。
そういうのがあったので、内容的によっぽど問題作的な雰囲気が強いのかと思って観ていたんですが、個人的には、「そんなに騒ぐような映画なのかなぁ…?」という感じでした。
もちろん、私にもっと靖国神社とか戦争に対する知識があれば、「あぁ、こんな表現がある!!」みたいな感想を持つことができたのかもしれないですけど、恥ずかしながら、そこら辺、けっこう無知なもので…、それほどの衝撃は受けなかったですね。
ていうか、毎年、8月15日前後になると地上波TV各局が競って第二次大戦を扱ったドキュメンタリー番組を作るじゃないですか。
私の目から見ると、正直、本作も、それらのドキュメンタリー作品とメッセージ性の強さという点ではそれほど変わらない感じがしましたね。
ただ、撮影手法というか、そういった技術的なところに基づいて派生してくる本作が映し出す靖国神社の臨場感は、他のドキュメンタリー番組とは比べ物にならなかったですね。
本作は、2005年8月15日(当時の首相は小泉純一郎)の靖国神社に、朝から晩までカメラを持って張り付いて、そこで繰り広げられている様々な出来事をひたすら記録していくというスタイルで構成されています。
旧日本軍の軍服(軍物にあまり詳しくないのではっきりしたことはよくわからないのですが、軍服の種類が一つではなかったので、劇中に出てきた軍服は、恐らく、陸、海、空軍それぞれの軍服ということなのでしょう)を着て参拝するおじいさん、征服のような衣装を着て参拝する若者の集団、神社の周辺でなぜか星条旗を持って「小泉純一郎首相を支持します」というプラカードを掲げる謎のアメリカ人、「英霊ばんざい」的な集会をしているところに「日本は謝罪しろ!!」的な言葉を叫びながら飛び込んでいって集会をしている人たちにボコボコにされる学生風の男性二人組み、参拝に訪れる小泉純一郎首相、集会の壇上で演説をする石原慎太郎東京都知事などなど、スクリーンには様々な人たちが映し出されますが、これらの人々のたたずまいが本当にリアルで(ドキュメンタリーに「リアル」という形容を使うのもどうかと思うんですが…)、スクリーンを通じてそれらを観ているのに、なんとなく人間の息使いまで感じさせる感じで、生々しさがすごかったです。
また、これら靖国神社で起こっている出来事をブリッジ的につないでいく刀匠へのインタビューもなかなかよかったですね。
インタヴューアーがけっこう厳しい質問をするので、90才になる刀匠の方(靖国神社の御神体である刀を作っている人だそうです)もしばしば長い沈黙をはさみながらポツポツと受け答えをするんですが、その沈黙の深みが職人としての深みも表しているようでなんとも味わい深かったです。
靖国神社や第二次大戦に関する知識量や、そしてなによりも、その人個人のものの考え方によって、評価の分かれる映画なのかもしれませんが、一本のドキュメンタリー映画としてはなかなか完成度の高い作品だと思います。
何度も書いていますが、公開までに何かとゴチャゴチャあったので、本作は、たぶん、DVD化されることはないと思うんですね。
ですから、もしも、近所の映画館で公開されるということがあれば、ぜひとも観に行っていただきたい作品ですね。
補足
意外と重要な点なのかもしれませんが、本作では、特に後半部分で、昭和天皇に関する様々な資料が映し出されます。
動画(記録映像?)、静止画(写真)、音声(刀匠の人が持っているテープ)など、日本国内で配信される情報でもこれだけの量をまとめてみることはできないんじゃないかと思うほど、けっこうな量が収録されています。
なんか、「補足」なんていう項目でチョコッと扱ってますけど、実はここら辺が公開の際に生じた一悶着の最大の原因なのでは…と勘ぐってしまいました。